センター本試験 2010年度 第6問 和訳・解答

/ 5月 13, 2018/ センター試験/ 0 comments

【和訳】

(1) 今日、性格の基本的な部分は子供期と青年期に形成されると、我々は信じている。若者は大人とは異なるものを必要とし、大人とは異なった方法で世界を感じているということを、我々は理解している。現代における若さの重視によって、大人自身が影響されてきたということすら、我々は理解できる。しかし歴史的に見れば、事態はいつもこんな風ではなかった。現代の産業社会の発展が子供期や青年期についての考え方に根本的な変化をもたらしてきた。

(2) 歴史家のフィリップ・アリエスが指摘しているように、子供期や青年期に対する現代の態度は、それ以前の時期における若さの概念と対照をなしている。中世のヨーロッパ人の多くが誕生日と実年齢を知らなかったとアリエスは述べている。ある年齢(例えば20歳の誕生日)に達した時に『大人』になるという考え方は、存在しなかった。したがって子供と大人の違いは曖昧で、子供達はしばしば大人と同様に扱われていた。中世のフランスでは、学校に通う子供はほとんどおらず、6歳の子供達が年長者とともに農場で働いていた。子供時代という概念そのものが中世には存在しなかったとまでアリエスは示唆している。

(3) 子供期、若者期という現代の概念はどのように生まれたのだろうか?一つの重要な要因は、ルネサンス期のイタリアで起きたような、貿易の成長と商業都市の台頭である。貿易に必要な技術を若者に授ける事の重要性は、ヴェネツィアやフィレンツェのような都市に認識されており、そうした都市は読み書きや数学を教える学校を設立した。17世紀にヨーロッパ人の民族国家が誕生すると、徴税官や記録係や行政官といったような、政府の役人の需要が拡大した。例えばルイ14世時代のフランスにおいては、この需要に応えて作られた多くのアカデミーで、より多くの若者が勉強した。より多くの教育を施すという傾向は18世紀に入っても続いた。18世紀の終わりまでにはほとんどの子供が学校へ行き、多くの時間を大人と離れて過ごすようになった。

(4) 教育を受ける生徒の増加は、もう一つの重要な態度の変化をもたらした。ジャン・ジャック・ルソーのような18世紀の思想家は、子供達はそれぞれの能力に応じて発達することを許されるべきであり、過度に訓練されるべきでないと信じていた。ヨハン・ハインリッヒ・ペスタロッチのような、ルソーの追随者は子供が健康的な大人に成長するためには、遊ぶことが必要だと強調した。子供に必要なことをこうして強調することは、今度はさらなる変化へと繋がった。19世紀の半ばまでに、工業化社会は児童労働を終わらせる法案を通し始めた。

(5) 最後の要因は『若者文化』の台頭だった。20世紀に新たな技術が発展したことによって、より高度なスキルの必要になり、中等・高等教育が急速に発展した。1930年までにアメリカのティーネイジャーのほとんどが高校に入学した。1960年までには、アメリカの高校卒業生の40%以上が大学へ進学するようになった。子供時代と大人時代の間の時間が長くなると、心理学者達は個人が最も世界に対してオープンになり、自分の将来について重要な決断をなす時期である、『青年期』の重要性を強調し始めた。しかし若者が同輩達とより長い時間を過ごすようになるにつれて、若者は音楽・ファッション・言語にまで至る大人社会とは異なる文化を生み出した。

(6) 近年の子供期と青年期についての考え方が、大人達に影響を与えたことは疑いがない。映画やテレビ番組や音楽は、ますます若者をターゲットにしており、社会全体に影響を与えている。多くの大人が若者を真似る。彼らは若者と関連付けられるジーンズとTシャツを着て、若々しいルックスを保とうとする。

(7) 大人達は別の点でも青年のようになってきている。技術的な変化が新しい製品や職業を生み出す時、こうしたプロセスは、大人の学んできたスキルが時代遅れになるかもしれないということも意味する。大人達は自分が青年と同じポジションにいることに気付く可能性がある。 彼らは自分の将来について決断を下したり、新しいスキルを学んだり、新たな職業を始めたりする用意が必要である。新たな選択肢を開拓することへの躊躇のなさ、といった青年に関連付けられる態度は大人の間にもますます広がっている。

 

【解答】

 問1 ③
 問2 ②
 問3 ③
 問4 ①
 問5 ①
 問6 ②

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