【和訳】

【難単語・難熟語】

• sensory → 感覚に関わる、知覚の
• selection → 選択
• snob → 通人気取りの人
• tell → 見分ける
• what if ~ → もし〜したらどうなるだろうか
• shine the spotlight → スポットライトを当てる、着目する
• alternative → 選択肢
• participant → 参加者
• reason behind A → Aの背後にある理由
• card trick → トランプの（手品の）わざ、トリック
• end up with A → 最終的にAになる、Aの羽目になる
• common sense → 常識
• outcome → 結果
• echo → 真似する
• remarkably → 非常に、顕著に
• involve → 関わらせる、参加させる
• ask for directions → 道を尋ねる
• implication → 含意、影響
• challenge → 異議を唱える、疑問視する
• set out → 出発する、開始する
• enduring → 長期間にわたる
• for all A → Aにも関わらず
• intimate → 親しい、個人的な、直接的な
• familiarity → よく知っていること、親密さ
• subjectivity → 主観性
• verbal → 言葉の
• disagreement → 不一致
• confirm → 確認する、認める
• elaborate → 手の込んだ、入念な
• justification → 正当な理由、納得のいく説明
• rationalization → 正当化、無理な理屈付け、自己弁護
• nothing more than → 〜にすぎない
• drive a wedge → 楔を打ち込む、境界をはっきりさせる、仲違いさせる
• A offer a window into B → AはBに向かう窓を提供する=AによってBが見えるようになる
• storytelling → （嘘の）話をでっち上げること、話をすること
• otherwise → ここではwithout our experimentsの意。
 

【読解・解答のポイント】

難易度★★Unknown to them, we sometimes used a card trick to exchange one face for the other so they ended up with the one they did not choose. Common sense tells us that all of us would notice such a big change in the outcome of a choice.

彼らに知られないように、我々は時々トランプの手品のテクニックを使って顔をすり替えて、彼らが選んでいない方の顔を手に取るようにした。常識的に考えれば、選んだものの結果についてそれほどの変化があれば、誰もが気が付くように思える。

手品を実験に生かすということについては、前段落の最初に既に述べられている。また、この実験の手順は前文に書いてあるので、それを踏まえて実験の意図が理解できれば、それほど難しい問題ではない。
第1文。元々ペアになっているカード（つまり2枚のカード）を見せているので、one face『一方』に対する『残りの一方』はthe other（face）となる。
第1文。soの後ろにthatが省略されている。『〜するように』と目的用法で訳す。
第1文。『トランプのトリックを使い顔をすり替える』というのが具体的にどういう形で行われるかは分からないが、表向きにして一度カードに書かれた顔を被験者に見せた後、カードを裏向きにして顔が見えない状態で被験者に気に入った方のカードを手に取らせたものと思われる。end up withは『最終的にAになる、Aの羽目になる』といった意味だが、この曖昧な部分をどう処理するかでセンスが問われる。『手に取る』とまで踏み込まなくても、『選んでいないカードを選んでしまうようにした』などでも良い。
第2文。common sense tells us that〜は『常識から〜とわかる』といった意味。
 
難易度★★★For all the intimate familiarity we feel we have with decision-making it is very difficult to know about it from the ‘inside’: one of the great barriers for scientific research is the nature of subjectivity.

我々は自身の意思決定に関して、詳細に把握していると感じているにもかかわらず、それを『内部』から知ることは非常に難しい。科学の研究において最も厄介なことの一つは、主観性というものの性質なのである。

コロン前の文の構造が見えにくく、the intimate familiarityにどのような訳語を付けるかが難しい。後半は平易だが、subjectivityという単語を知らないとどうしようもない。
for all A『Aにも関わらず』を知らないと、ますます文の構造が見えにくくなる。
familiarityの後ろにwhichあるいはthatの省略があり、we feel we have with decision-makingという関係代名詞節がthe intimate familiarityを修飾している。we feel that we have the intimate familiarity with decision-makingという文を想定すると理解しやすい。
intimate familiarityは『親しい親密さ』などと訳しても、意味がわからない。ここでのintimateは『詳細な』あるいは『個人的な、直接的な』というような意味を含んでおり、後半部分のinsideと対応している。familiarityは『よく知っていること、知悉していること』なので、intimate familiarityは『自分のことだから当然分かったつもりでいるということ』。For all the intimate familiarity we feel we have with decision-makingを直訳すると、『意思決定に関して我々が自分で持っていると感じている直接的な知悉にもかかわらず』となる。
1つ目のitはto以下、2つ目のit（about itのit）はdecision-makingを指している。
コロン前もコロン後も『主観というものの把握が難しい』という内容だが、後半はやや一般化されている。コロン自体に訳語を付けるのが難しいため、そのままコロン以下を訳せばよいが、あえて訳すのであれば、『このように』『というのも』などとしてもよいかもしれない。
 
難易度★★★★★As anyone who has ever been in a verbal disagreement can confirm, people tend to give elaborate justifications for their decisions, which we have every reason to believe are nothing more than rationalizations after the event. To prove such people wrong, though, is an entirely different matter: who are you to say what my reasons are?

口論をした事のある人なら誰にでも分かることだが、人々は自身の決定を入念に正当化しようとする傾向がある。我々には、それが後付けの自己弁護に過ぎないと考えるに足る十分な根拠がある。しかし、そうした人々の主張が間違っていると証明できるということでは全くない。というのも、私にとっての理由をなぜあなたが口出しできるのですか、と彼らは言うだろうから。

かなりの難問。単語や文法が難しいというよりも、前後を読んで内容をしっかり把握し、下線部の各部が指すものを適切に表現する必要がある。そういった意味では良問だが、若干難しすぎるかもしれない。また最後のコロン以下はそのまま訳しても意味をなさないので、意訳する必要があるが、十分な解答をかけた受験生は少ないと思われる。
以下のような流れを掴んだ上で、解答する必要がある。

【下線部前】
◆トランプの実験→顔写真がすり替えられても、過去の判断に対して、人々ははもっともらしい理由付けをする

【下線部】
◆口喧嘩→人々は過去の判断が正しかったと必死で主張する

◆どちらの場合も後付けでむりやり理屈を付けているに過ぎない

◆だが、口喧嘩で人々が言っていることが誤りだと証明することはできない←なぜなら「判断した時、実際に私はそう思っていたんだ」「何で私の心の中（主観）のことがお前に分かるんだ？」と言われてしまうと、反証できないから。

【下線部後】
◆しかし、トランプの実験のように、選ばなかったものに理由を述べた時は、それが判断の際に本当に思っていたことでないことは証明できる。


第1文。asの節はconfirmの目的語が欠けているので、文法的に言えばasは関係代名詞であり、先行詞は主節全体。とはいえ、『〜だが』『〜ように』と訳せばよいだけなので、それほど文法に囚われる必要はない。
第1文。verbal disagreementは『言語上の不一致』つまり『口論』。口喧嘩をするときは、誰しも自分の判断が正しかったことを必死で主張するが、筆者達のチーム（この文の後半でweと表現されている）の行った実験からすれば、すり替えられたトランプにも人は最もらしい理由付けを行うのだから、口論の際に人々が主張するものは、判断を行った時の『本当の理由』などではなく、その場でひねり出した後付けの自己弁護に過ぎない、というのが筆者の主張。このことが分かっているとアピールできる解答が書けるとよい。
第1文。give elaborate justifications for their decisionsは直訳すると『彼等の決定に対して入念な正当化を与えようとする』。ここではelaborate justification をelaborately justifyと動詞化して訳した。
第1文。whichの先行詞はjustification。we have every reason to believe the justification are nothing more than rationalizationsというように、whichの関係節内の欠けている部分に、先行詞justificationを補って考えると分かりやすい。またwe have every reason to believeをカッコに入れるとよい。believeとareという動詞がそのまま2つ並んでいることに違和感があり、そこに主語が欠けていることに気づけると良い。
which以下は非制限用法の関係代名詞節であるが、訳す時にwhich以前とどのように繋ぐのかが意外と難しい。下線部(2)でもコロンの前後をどのように繋ぐのか（どのような接続詞をあてるか）が難しかったが、これは筆者自身が明確な接続詞をあてられない、あるいはあてる必要がないと判断して、わざと曖昧なままにしているため。asや独立分詞構文でも同じようなことが言える。論理関係が明白な場合は、訳す際に補ってもよいし、当たり障りのないように『上手く誤魔化して』和訳を作るのも一手。
第1文。we have every reasonというのは、we（筆者を含む研究チーム）にとっては、人が自身の判断・行動を説明する場合、それが後付けに過ぎないと分かっているし、事実トランプの実験でも確かめられているということ。
第1文。after the eventは『事後に』。人は口論の原因になる出来事が起こって、争いが始まった後に、自分の行動・判断に対して、正当な理由を考えているということ。
第2文。different matterについて。何と何が別問題なのかというと、『（口論している人々の説明が後付けの自己弁護だと）我々が信じる（根拠がある）こと』と『実際にそれを証明する』が別問題だということ。つまり、we （筆者を含む研究チーム）であっても、他人の主観について何かを証明することは難しいから。つまり「私は本当に行動・判断の前からそう思っていたんだ」と言われたら、それを反証できないということ。本当に厄介なのは、彼ら（口論している人々・後付けで自己弁護をしている人々）は自分の述べていることが後付けだと気付いていないこと。
この問題では代名詞をしっかり訳し分ける必要がある。anyoneは一般的な人々。第1文のpeopleも一般的な人々、あるいは口論をしている人々。weは筆者を含む研究チーム。第2文のpeopleは後付けで自己弁護をする人々。
第2文。コロン以下のyouは、peopleから見たwe。つまり自己弁護をしている人々peopleに対して「お前は間違っている」「お前の言っていることは後付けの自己弁護に過ぎない」と指摘する人。my reasonのmyは自己弁護をしている人々を指す。
コロン以下を直訳すると『私の理由が何か、と言うなんて、お前は誰だ』などとなり、このまま書いても点数にはならないだろう。またコロンは『もしそのような人々に間違っていると認めさせようとしたら以下のようになるだろうから』といった意味であり、それをそのまま書くわけにもいかず、やはり上手い落とし所を見つける記述力・バランス感覚が必要になる。