センター本試験 2009年度 第6問 和訳・解答
【和訳】
(1) 私が初めて大学に入学した時、プロの翻訳家である私の叔母は、私に新しい英語の辞書をくれた。私はそれが1か国語の辞書であることが分かって戸惑った。それは全てが英語で書かれている事を意味した。それは初心者向けの辞書ではあったが、クラスメイトは誰も持っていなかったし、正直な所、私は最初それが極端に難しいと感じた。私はその辞書で言葉を調べ、それでもまだ意味を完全には理解できないのだった。私は一般的な1か国語の辞書に慣れていた。見出し語が英語で書かれ、それに相当する意味が日本語で書いてあるようなものである。私はなぜ叔母が私のために、物事を難解にするような決断をしたのか、本当に不思議だった。大学で3年間英語を学んだ今となっては、1か国語の辞書が外国語の習得に重要な役割を果たすということが理解できる。
(2) 私が10歳で英語を学び始めた時、私は出来るだけ多くの基礎的な語彙を拾い集めたくて、シンプルな2か国語辞書とでも呼べるようなものを自分で作った。それはカードに書かれた英単語と、それに対応する日本語で出来ていた。私は英単語をカードの片面に書き、それに対応する日本語をもう一方の面に書いたものだった。私は基本的な日常単語を覚えるのに、便利なツールだと思った。
(3) 高校に上がるともっと多くの語彙を含んだより長い文章を課されるようになった。そのだ、私は一般的な英和2か国語辞書を使い始めた。そのような辞書は一般的に使用される多くの英単語が掲載されていた。それぞれの項目には、発音の指針、相当する日本語、文法的機能についての注釈、例文が付されていた。
(4) プロの翻訳家や通訳として働く人にとっては、もっと専門的な2か国語の辞書がある。私の叔母は医学雑誌に送る記事をよく翻訳していたので、医学に特化した2か国語辞書を使用している。そのような辞書は、様々な分野で利用でき、日常の場面で使われる「come」や「go」などの単語を省いていることが多いが、一方で普通の2か国語辞書には載っていない高度に専門的な用語を掲載している。例えば2か国語の医学事典には「基礎体温」というような単語が掲載されている。それはほとんどの人に馴染みのない言葉だろうが、体が休んでいる状態の体温を指す表現である。
(5) では、2か国語辞書がそれほど有用であるのに、なぜ叔母は私に1か国語の辞書をくれたのだろうか?私が気付いていたように、実際は、ある言語と別の言語の間にはしばしば完璧な符合が存在しない。ある英単語の本当の意味は日本語の「訳語」を調べても絶対に分からない、とまで叔母は言っている。だからこそ、私がある言葉の意味をよりよく理解したいのならば、1か国語辞書で定義を読むようにと主張したのだ。少しずつ、私は叔母の言いたいことが分かってきている。
(6) 初心者向けの1か国語辞書を使うことは、もう一つの点でも、私の役に立っている。私の受動的な語彙(私が理解している言葉)がだんだんと能動的な語彙(私が実際に使用する言葉)になってきているのだ。この辞書は、記載語の定義をする際に、限られた数の単語(およそ2000語)しか使っていない。そうした定義を読む度に、私は基礎的な単語を繰り返し目にし、物や概念を説明するためにそれがどのように使われるかにも触れることになる。
(7) いったん初心者向けの1か国語辞書に慣れてしまうと、私はすぐに別の種類の1か国語辞書を見つけた。それはエッセイを書いたり、プレゼンの準備をするのに特に有用なものである。これは「正しい語を見つける」辞書と呼んでも良いものである。これを使うと、既に馴染みのある言葉の代わりに、別の、そして時としてより正確な表現にたどり着くことができるのである。例えば「難しい」をひくと、「困難な」や「厄介な」や「大変な」や「厳しい」といった関連する一連の言葉が掲載されているのである。「大切な」を引くと「重要な」「重大な」「本質的な」「影響力のある」「主要な」が出てくる。
(8) 私が今分かったことは、1か国語辞書と2か国語辞書はどちらもそれぞれの使用法があり、どちらを選ぶかは目的次第だということである。もし外国語の文章の大まかな意味を理解したいが、その言語で自分の意見を述べる必要がないのであれば、2か国語の辞書で十分だと感じるかもしれない。もしプロの翻訳家として働くのならば、専門的な二か国語の辞書を使う必要を感じるでしょう。しかし最終的な目標が、外国語を明確に理解し、また様々な単語を使用してその言語を話したり書いたりすることなのであれば、私は基礎的な語彙を身に付けたのちにすぐに、1か国語の辞書を手に入れることを強く勧めます。私が英語で上達できたのは叔母の知恵のおかげだと思っています。
【解答】
問1 ②
問2 ①
問3 ④
問4 ③
問5 ③
問6 ②
問7 ①
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