【和訳】

【難単語・難熟語】

• psychiatric → 精神医学の
• neural → 神経の
• training → ここでは後に出てくるresidency training『医学の実習』のこと。
• psychoanalysis → 精神分析
• perspective → 観点、視点
• aspect → 面、観点
• residency training → 医学の実習
• molecular → 分子の
• gene regulation →遺伝子の調節
• overarching → 全てに関わる、非常に重要な
• fuel → 燃料を与える、あおる
• mind → 精神、知性
• aspiring → 意欲にあふれる
• initial → 最初の、初期の
• bedrock → 岩盤、根底
• coursework → カリキュラムに沿った学習課題
• urge → 強く説得する、促す
• the National Institute of Mental Health → アメリカ国立精神衛生研究所
• seminar → ゼミ、研究会
• in the abstract → 抽象的に、理論上
• scientific literature → 学術文献
• modest → 控えめな、（量が）大きくない
• function → 機能する、働く
• helpful → 役に立つ、有益である
• lines of thought → 思考方法、考え方、論理の筋道
• prove → （自動詞）判明する、分かる
• bold → 大胆な、果敢な
• messy → 散らかった、複雑で扱いにくい
• unstructured → 組織立っていない、構造化されていない
• boundary → 境界
• discipline → 学科、学問分野
• reside → 住む、〜にある
• inhibit → 妨げる、抑制する
• venture into~ → 思い切って〜に進む、〜に着手する
• instinctively → 本能的に、直感的に
• go along → （計画・準備しないで）進んでいく
• join forces with~ → 〜と協力する
• biochemistry → 生化学
• molecular genetics → 分子遺伝学
• anxiety-provoking → 不安を誘発するような
• exhilarating → 気分を陽気にする
 

【読解・解答のポイント】

難易度★★★★But the overarching ideas that have influenced my work and fueled my interest in conscious and unconscious memory derive from a perspective on mind that psychiatry and psychoanalysis opened up for me. Thus, my initial career as an aspiring psychoanalyst was hardly a detour from the main path; rather, it was the educational bedrock of all I have been able to accomplish since.

しかし私の研究に影響を及ぼし、意識的・無意識的な記憶に対する私の興味をかき立ててきた総合的なアイデアは、精神医学と精神分析が私に開いてくれた、精神についての見解に由来している。このように、意欲的な精神分析医という私の初期のキャリアは本道から外れた回り道ではなかった。むしろそれは、それ以来私が成し遂げてこられた全ての事の、教育的な基盤となったのである。

下線部(1)を解く前に、以前の文をよく読み、筆者は『脳における遺伝子制御に関する分子生物学に取り組む神経科学者』であり、その道に進む前は精神医学の実習を行なっており、精神分析にも興味があった、という事を理解しておかねばならない。
内容があまり具体的でなく、単語も難しいものが含まれるのでやっかい。その分、文法的には大した内容は含まれていない。分からない単語が1,2語であれば、想像して補っていくこともできるが、多くなると不可能になる。conscious、derive、perspective、psychiatryあたりは知っておかないと、太刀打ちできないだろう。
第1文。overarchingが難単語だが、ideaにかかっている形容詞であり、ideaには後ろからもthat節がかかっているので、分からなければ訳さなくても大意に影響はない。
第1文。1つ目のthat〜memoryまでがideaにかかる関係代名詞節。influencedとfueledがhaveの後ろに並列され、consciousとunconsciousがmemoryの前に並列されている形。fuelは動詞として使われており、目的語がinterest『関心』なので、『かきたてる』といった意味になる。
第1文。mindは訳語に迷うが、筆者が精神医学と精神分析に取り組んでおり、それが後の役に立ったという文脈から、『精神』と訳した。
第1文。2つ目のthat〜for meまではa perspective on mindにかかる関係詞節。
第2文。aspiring、detour、bedrockあたりが難し目。単語を知っていれば訳は簡単。
第2文。allの後ろにthatが省略され、I have〜sinceまでがallにかかっている。
 
難易度★★★A new finding allows one to see for the first time a part of nature — a small piece of the puzzle of how something functions. Once I have gotten into a problem, I find it extremely helpful to get a complete perspective, to learn what earlier scientists thought about it. I want to see not only what lines of thought proved to be productive, but also where and why certain other directions proved to be unproductive.

新たな発見をするによって、人は自然の一端、つまりあるものがいかに機能しているのかというパズルの小さな1片を、初めて見ることができるようになる。ある問題に出くわした時に私が感じるのは、全体像を掴むこと、つまりこれまでの科学者たちがその問題についてどう考えていたかを知ることが極めて重要だということである。私はどのような思考の方法が生産的だと判明したかということだけでなく、他の方向性のどこが、なぜ非生産的だと判明したのかということをも知りたいのである。

第1文は平易。無生物主語なので、主語を『〜によって』と訳すとまとめやすい。
第1文。a part of natureをハイフン以下のa small piece of the puzzle of how something functionsで言い換えている。
第2文。単語、構文は難しくないが、意味が抽象的で捉えにくい。Once~『ひとたび〜すると』。当サイトの解答では、分かりやすく自然な訳にするために、I findと合わせて主語のように訳してみた。
第2文。I find it A(形容詞) to doの形は、よくある第5文型の構文。itは形式目的語で、その内容はto以下で示されている。この文ではto以下が2つあるが、andなどはなく、単にカンマで接続されている。ここでは文脈上これを同格と解釈し、『つまり』と訳した。ある問題の全体像を掴むということは『つまり』、過去の科学者がその問題についてどう対処してきたかを知ることである、と解釈した。この2つのto不定詞を『そして』というように訳すと、『全体像を掴み、そして・・・』となり、全体像を掴むという部分が、あまりにも抽象的で意味が薄く、文脈上浮いてしまう。次の第3文を読むと、過去の科学者の思考を知ることが、全体像を掴むことだと分かる。
第3文。頻出の構文であるnot only A but also B。『AだけでなくBも』という意味だが、Aはwhat lines of thought proved to be productive。Bはwhere and why certain other directions proved to be unproductive。whereとwhyが並列されている。
第3文。proveは自動詞として使われているので『分かる』『判明する』といった意味。
第3文。other directionとは、正しい考え方『以外の』、他の方向性のこと。
 
難易度★★★One should not be afraid to try new things, such as moving from one field to another or working at the boundaries of different disciplines, for it is at the borders that some of the most interesting problems reside. Working scientists are constantly learning undiscovered things and are not inhibited from venturing into a new area because it is unfamiliar. They follow their interests instinctively and teach themselves the necessary science as they go along. Nothing is more stimulating for self-education than working in an unexplored area.

ある分野から他の分野に移ったり、異なる学問分野の境界上で研究するといった、新しい事に挑戦するのを恐れるべきではない。というのも、境界にこそ最も興味深い問題がしばしば存在するからである。研究を行う科学者達は絶えず未発見の物事について学んでおり、それが不慣れだからといって、新しい分野に挑戦する事を禁じられてはいない。彼らは本能的に自身の興味に従っており、必要な科学的知識は研究の過程で自ら学んでいくのである。未開拓の領域で研究することは、自らの学びを進める上で、この上ない刺激となる。

第1文。かなり平易。oneが一般に人を指す事、boundariesとdisciplineとresideの意味、for以下の強調構文がポイント。
第1文。such as〜different disciplinesまではnew thingsの具体例。
第1文。boundaryとborderは同意。
第1文。forは『というのは』『なぜなら』の意で、for以下は強調構文。本来はsome of the most interesting problems reside at the borders.の語順だったが、at the bordersを強調するために、前に出してit isとthatで挟んだもの。at the bordersを何らかの形で強調した訳を付けると好印象。
第2文。比較的平易。『科学者は未発見のものを研究するのが仕事→だから専門外の分野に挑戦したっていい』という論理が分かるかどうかがポイント。
第2文。notは文の最後まで（because節も含んで）かかっている。because節をnotの影響から外してしまうと『それが不慣れであるので、新しい分野に挑戦する事を禁じられていない』という、よく分からない流れになってしまう。
第3文。一見簡単だが、訳しにくい。teach themselvesとas they go alongとnecessary scienceがポイント。
第3文。teach themselvesは『彼ら自身に教える』→『自分で学ぶ』。
第3文。go alongは『（計画・準備しないで）進んでいく』。asは『〜するにつれて』あるいは『〜する間に』といった意味で、時間の経過を表す接続詞。下線部(1)と下線部(2)の間で、筆者が『大学で基礎学問の講座を受けるよりも、よい研究室に早く入るべき』と若者にアドバイスしていたことを思い出すと良い。必要な学問を計画的に予め修めておくというよりは、早く興味のある研究に取り掛かって、必要な科学的知識は専門外であっても、都度都度自分で学んでいけばよいということ。以上の文脈からas they go alongは『研究の過程で』と訳した。
第3文。the necessary scienceとは自分の研究を進める上で必要になる学問的な知識のこと。
第4文。Nothing is more A（形容詞）for B（名詞） than C（名詞）の形で、『BにとってCほどAなものはない』という意味。ここでは『BにとってCはこの上なくAである』と訳した。
第4文。workingは、この文脈においては、学問研究に取り組む事。self-educationは前文のteach themselves the necessary scienceに対応している。