京大過去問 2022年 第1問(英文和訳)

/ 8月 19, 2022/ 独立分詞構文, 省略, ダブルミーニング, not so much A as B, 第1問(和訳), 単語の意味を想像する, 英文和訳, be to 不定詞, 難易度★★★, 難易度★★★★★, such that, 構造が見えにくい, 倒置, so that/ 0 comments

【目次】

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【問題】

次の文章を読み、下の設問(1)~(3)に答えなさい。(50点)
 
That man should have dominion “over all the earth, and over every creeping thing that creepeth upon the earth,” is a prophecy that has hardened into fact. Choose just about any metric you want and it tells the same story. People have, by now, directly transformed more than half the ice-free land on earth — some twenty-seven million square miles — and indirectly half of what remains. We have dammed or diverted most of the world’s major rivers. Our fertilizer plants and legume crops fix more nitrogen than all terrestrial ecosystems combined, and our planes, cars, and power stations emit about a hundred times more carbon dioxide than volcanoes do. In terms of sheer biomass, the numbers are stark-staring: today people outweigh wild mammals by ratio of more than eight to one. Add in the weight of our domesticated animals — mostly cows and pigs — and that ratio climbs to twenty-two to one. “In fact,” as a recent paper in the Proceedings of the National Academy of Sciences observed, “humans and livestock outweigh all vertebrates combined, with the exception of fish.” We have become the major driver of extinction and also, probably, of creation of species. So pervasive is man’s impact, it is said that we live in a new geological epoch — (a)the Anthropocene. In the age of man, there is nowhere to go, and this includes the deepest trenches of the oceans and the middle of the Antarctic ice sheet, that does not already bear our Friday-like* footprints.
An obvious lesson to draw from this turn of events is: be careful what you wish for. Atmospheric warming, ocean warming, ocean acidification, sea-level rise, deglaciation, desertification, eutrophication — these are just some of the by-products of our species’s success. (b)Such is the pace of what is blandly labeled “global change” that there are only a handful of comparable examples in earth’s history, the most recent being the asteroid impact that ended the reign of the dinosaurs, sixty-six million years ago. Humans are producing no-analog climates, no-analog ecosystems, a whole no-analog future. At this point it might be prudent to scale back our commitments and reduce our impacts. But there are so many of us — as of this writing nearly eight billion — and we are stepped in so far, return seems impracticable.
And so we face a no-analog predicament. (c)If there is to be an answer to the problem of control, it’s going to be more control. Only now what’s got to be managed is not a nature that exists — or is imagined to exist — apart from the human. Instead, the new effort begins with a planet remade and spirals back on itself — not so much the control of nature as the control of the control of nature.

*Friday-like: Friday is the name of a character in Daniel Defoe’s novel Robinson Crusoe(1719)

(1) 下線部(a)the Anthropoceneについて、本文に即して日本語で説明しなさい。ただし、本文中に列挙された具体的な特徴から4つを選んで解答に含めること。

(2) 下線部(b)を和訳しなさい。

(3) 下線部(c)を和訳しなさい。

【単語】

  • dominion → 支配権、領土
  • “over all the earth, and over every creeping thing that creepeth upon the earth,” → 創世記(Genesis)1章を受けている
  • creepeth → creep(這う)+eth(古い三人称単数形)
  • prophecy → 預言、予言
  • harden into A → 固まってAになる
  • metric → 旧約聖書の詩篇のことか。
  • some → およそ
  • square mile → 平方マイル、約2.59平方キロメートル
  • dam → ダムを建設する
  • divert → 迂回させる、付け替える(川の流れを人工的に変えること)
  • fertilizer plant → 肥料工場
  • legume → マメ科の植物
  • nitrogen → 窒素
  • terrestrial → 地球上の、地上の、陸上の
  • ecosystem → 生態系
  • power station → 発電所
  • emit → 放出する、排出する
  • carbon dioxide → 二酸化炭素
  • in terms of A → Aという点では
  • sheer → 純粋な、全くの
  • biomass → 生物量
  • stark-staring (mad) → 完全に気が狂っている
  • outweigh~ → 〜より重い
  • mammal → 哺乳動物
  • by(in) ratio of A to B → A対Bの割合で
  • add A in(=add in A) → Aを算入する、計算に含める。この文でのadd以降は『命令文, and…』の形を取って、『〜しなさい、そうすれば…』『〜すると、…ということになる』という意味。
  • domesticated animals → 家畜、人に飼われている動物
  • Proceedings of the National Academy of Sciences → 米国科学アカデミー紀要
  • observe → 述べる
  • livestock → (資産と見做される)家畜
  • vertebrate → 脊椎動物
  • with the exception of A → Aを除いて
  • driver → 推進力、要因
  • extinction → 絶滅
  • pervasive → 行き渡っている、普及している
  • impact → 影響、衝撃
  • pervasive is man’s impact → 主語(man’s impact)と補語pervasiveが倒置されている。
  • geological → 地質学の
  • epoch → (重要な出来事・発展などで特徴づけられた)時代
  • Anthropocene →人新世(anthropo『人』+cene『新しい)。人間の活動が地球全体のシステムに大きな影響をもたらすようになった時代を、独立したこの地質年代として位置付けることが提唱されている。
  • trench → 海溝
  • Antarctic → 南極
  • ice sheet → 氷床(陸を覆う大規模な氷の塊)
  • bear → have
  • Friday → クルーソーが漂着した島で出会う原住民。クルーソーに命を救われ、クルーソーに忠誠を誓う。
  • footprint → 足跡
  • obvious → 明白な
  • lesson → 教訓
  • turn → 変化、転機
  • be careful what you wish for → 『願い事は気を付けてせよ』という諺。
  • atmospheric → 大気の
  • acidification → 酸性化
  • deglaciation → 退氷(氷河や氷床が溶けて後退すること)
  • desertification → 砂漠化
  • eutrophication → 富栄養化(川・湖・海などに窒素やリンなどが流れ込み、生態系にダメージを与えること)
  • by-products → 副産物
  • A is such that~ → Aは非常にひどいものなので〜
  • blandly → 平然と、穏やかに
  • label → ラベルを貼る、〜と呼ぶ
  • a handful of~ → ほんの僅かな〜
  • comparable → 比較しうる、匹敵する
  • asteroid → 小惑星
  • impact → 衝突、衝撃
  • reign → 栄えた時代、治世
  • no-analog → 類のない
  • whole → (副詞)全く
  • prudent → 慎重な、分別のある
  • scale back(=scale down) → 縮小する
  • commitment → 関わり
  • as of A → Aの時点で
  • step in → 介入する、ここでは人間が地球環境に対して影響を与え過ぎていること
  • impracticable → 非現実的な
  • predicament → 困難な状況
  • control → 支配、管理、抑制
  • apart from A → Aを除いて
  • spiral back → 螺旋状に戻る
  • instead → その代わりに、そうではなく
  • not so much A as B → AというよりむしろB

【和訳】

人間に『地上全て、そして地上を這い回るあらゆる這うものを支配させよう』というのは、実現された預言である。ほぼどの詩篇を選んでも、同じようなストーリーが語られている。人々はこれまでに、氷地以外の土地の半分以上(それはおよそ2700万平方マイルに及ぶ)を直接的に、残りの半分を間接的に、変容させてきた。世界の主な河川の殆どはダムで堰き止められ、付け替えられてきた。人間の肥料工場とマメ科の穀物は、地球の生態系全体が合成するより多くの窒素を固定している。そして飛行機と車と発電所は、火山のおよそ100倍の二酸化炭素を排出している。純粋な生物量という観点では、数値は途方もないものとなる。現在の人間は、野生の哺乳類の総質量の8倍以上である。人間に飼育されている家畜(大部分が牛と豚)まで含めれば、その割合は22倍まで跳ね上がる。米国科学アカデミー紀要に掲載された最近の論文によれば、『実際、人間と家畜の質量は、魚類を除く全ての脊椎動物を合わせたものを超えている』。人間は生物の絶滅の主な要因であるだけでなく、おそらくは、新たな生物の誕生の引き金ともなっている。人間の影響は地球全体に及んでいるため、我々は新たな地質年代、つまり(a)『人新世』を生きているのだと言われる。人間の時代には、探検する場所は残されていない。これには最も深い海溝や、南極の氷床の中央も含まれる。そこにはもはやフライデーの足跡はないのである。
こうした事象の転換から引き出される教訓は明白である。つまり、願い事はよく考えてせよ、ということである。大気の温暖化、海洋の温暖化、海洋の酸性化、海面の上昇、退氷、砂漠化、富栄養化といった問題は、我々人間という種が成功したことによる、副産物の一部に過ぎない。(b)『地球規模の変動』などと穏当な名で呼ばれているもののペースはあまりにも早いので、地球の歴史上、比較しうるものが数えるほどしかない。最近の例で言えば、恐竜の繁栄を終わらせた小惑星の衝突だが、それは6600万年も前のことである。人間は類例のない気候、類例のない生態系、そして全く類例のない未来を生み出している。現時点では、人間の関与を縮小し、その影響を減らす事が、思慮分別のある態度と言えるだろう。しかし人間の数があまりにも多く(これを書いている時点でほぼ80億人)、あまりにも深入りし過ぎているため、引き返すことは非現実的であるように思える。
だからこそ我々は類を見ない困難に直面しているのである。(c)もし管理制御という問題に答えがあるとすれば、その管理制御を強めるということになるだろう。ただし目下管理されるべきは、人間とは切り離されて存在している自然、あるいは存在すると想像されている自然ではない。むしろ、地球を作りかえることから始まった新たな努力は、努力自体に対する努力に回帰してゆく。つまり自然に対する管理制御ではなく、管理制御を『抑制する』ということである。

【解答例】

(1) 人間は地球上の氷地以外のほとんどの土地を変容させ、河川を堰き止め、付け替えてきた。また人間活動による窒素固定は地球の生態系全体による量を上回り、飛行機と車と発電所の二酸化炭素排出量は火山の100倍に達する。the Anthropoceneは、こうした人間の活動が地球の隅々にまで及び、地球の生態系全体に大きな影響を与えている『人の時代』を指す。

(2) 『地球規模の変動』などと穏当な名で呼ばれているもののペースはあまりにも早いので、地球の歴史上、比較しうるものが数えるほどしかない。最近の例で言えば、恐竜の繁栄を終わらせた小惑星の衝突だが、それは6600万年も前のことである。

(3) もし管理制御という問題に答えがあるとすれば、その管理制御を強めるということになるだろう。ただし目下管理されるべきは、人間とは切り離されて存在している自然、あるいは存在すると想像されている自然ではない。むしろ、地球を作りかえることから始まった新たな努力は、努力自体に対する努力に回帰してゆく。つまり自然に対する管理制御ではなく、管理制御を『抑制する』ということである。

【解説】

  • まずはしっかりと和訳できることが大前提です。「ざっくりと文意をつかめばよい」というような読み方は、京大受験では通用しません。テスト本番で分からない部分を想像で補うのは仕方ないにしても、基本的に全ての文を正確に(かつ速く)読む必要があります。
難易度★★★So pervasive is man’s impact, it is said that we live in a new geological epoch — (a)the Anthropocene.

人間は地球上の氷地以外のほとんどの土地を変容させ、河川を堰き止め、付け替えてきた。また人間活動による窒素固定は地球の生態系全体による量を上回り、飛行機と車と発電所の二酸化炭素排出量は火山の100倍に達する。the Anthropoceneは、こうした人間の活動が地球の隅々にまで及び、地球の生態系全体に大きな影響を与えている『人の時代』を指す。








難易度★★★Such is the pace of what is blandly labeled “global change” that there are only a handful of comparable examples in earth’s history, the most recent being the asteroid impact that ended the reign of the dinosaurs, sixty-six million years ago.

『地球規模の変動』などと穏当な名で呼ばれているもののペースはあまりにも早いので、地球の歴史上、比較しうるものが数えるほどしかない。最近の例で言えば、恐竜の繁栄を終わらせた小惑星の衝突だが、それは6600万年も前のことである。











難易度★★★★★If there is to be an answer to the problem of control, it’s going to be more control. Only now what’s got to be managed is not a nature that exists — or is imagined to exist — apart from the human. Instead, the new effort begins with a planet remade and spirals back on itself — not so much the control of nature as the control of the control of nature.

もし管理制御という問題に答えがあるとすれば、その管理制御を強めるということになるだろう。ただし目下管理されるべきは、人間とは切り離されて存在している自然、あるいは存在すると想像されている自然ではない。むしろ、地球を作りかえることから始まった新たな努力は、努力自体に対する努力に回帰してゆく。つまり自然に対する管理制御ではなく、管理制御を『抑制する』ということである。













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