京大過去問 2012年 第1問(英文和訳)
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【問題】
次の文章の下線をほどこした部分(1)~(4)を和訳しなさい。
During his failed attempt to reach the North Pole on foot in the spring of 1895, Norwegian explorer Fridtjof Nansen encountered several sets of fox footprints on the ice north of the 85th parallel, several hundred kilometers from the nearest dry land. “What in the world was that fox doing up here?” he wrote in his journal. “It is incomprehensible what these animals live on up here, but presumably they are able to snap up some small crabs in the open waterways. But why do they leave the coast? That is what puzzles me most. Can they have gone astray?”
Early attempts to solve some of these riddles only added to the mystery. During the 1970s a research team spent several years trying to track the winter movements of Arctic foxes in northern Alaska. (1)The animals were fitted with numbered ear tags, released, and their whereabouts were then recorded. Although next to nothing was revealed about how they got to various places, due to limitations of the techniques being employed, deep into the high Arctic, more than 2000 kilometers away, is where some were recovered. In a valiant effort to learn more, the team decided to try out radio telemetry, the technology that had revolutionized wildlife tracking in the early 1960s. (2)The target may be followed to wherever it goes via a radio collar that is fitted to the animal being investigated, which transmits a signal that researchers on foot or in a plane can detect with precision. “We learned absolutely nothing,” says one of the researchers. “The place is simply too big and the foxes are too mobile. We would catch one and put a collar on it and then we would never hear the signal again. They just disappeared — gone outside the ability of the plane to keep track of them.”
The thought of an Arctic fox wandering around for months on end, under such harsh conditions, continues to raise many questions. (3)Is there some preordained pattern that the animals follow or are the journeys random? If not the latter, how do they navigate in an icescape that offers no permanent landmarks, that drifts and spins at the mercy of the currents, melts and freezes according to the weather, and seemingly has not much to offer in the way of a scent trail to follow for satisfying their appetites?
Even the advent of satellite-based tracking in the early 1990s did not provide an immediate answer. The first collars, which required large batteries, were far too heavy for Arctic foxes. (4)But now, at last, the technology has caught up, in the form of light, battery-powered devices tailored for the Arctic fox, including one equipped with an antenna laced with red pepper to discourage animals from gnawing it off. Last year, a Canadian team published results of a satellite-tracking study of the Bylot Island foxes. The findings provide more evidence that Arctic foxes regularly travel enormous distances. Although it is too early to say for sure, it is possible that foxes decide to go onto the ice based partly on how much food is available on land in the autumn.
From Forget hibernating, migrating or holing up — Arctic foxes take winter on the chin, New Scientist
【和訳】
1895年の春、ノルウェーの探検家フリチョフ=ナンセンは徒歩での北極点到達に失敗した際、最も近い陸地から数百キロ離れた北緯85度線より北の氷上で、何組かの狐の足跡に出くわした。『こんな所で狐は一体全体何をしているのだろう?』と彼は旅行記に記している。『こうした動物達がこんな所で何を食べて生きているのかは分からないが、氷の途切れた海から小さな蟹でも捕れるのかもしれない。それにしてもなぜ狐達は海岸を離れるのか。これが一番の謎だ。道に迷ってしまうことがあり得るのだろうか』
これらの疑問を解き明かそうとする初期の試みは、その謎を深めただけであった。1970年代、研究チームは数年にわたり、北アラスカのホッキョクギツネの冬期の移動を追跡しようと試みた。(1)狐達は番号のふられたタグを耳に付けて解放され、その後居場所が記録された。使用された技術の限界のせいで、どのように狐達が様々な場所に到達したのかはほとんど何も解明されなかったが、2000キロも離れた高緯度北極の深部で、幾つかのタグが回収された。さらに研究を進めようとの勇敢な努力がなされ、研究チームは1960年代初頭の野生生物の追跡に革命をもたらした無線遠隔測定法を試すことを決定した。(2)調査対象となる動物に無線機付き首輪を取り付けるのだが、その首輪から発信される信号を、徒歩あるいは飛行機上の研究者が正確に検知することで、動物がどこに向ったとしても捕捉することができると考えたのである。『何の成果もありませんでした』と研究者の1人は言う。『その地域は広すぎるし、キツネ達は動き回りすぎる。我々はキツネを捕まえて首輪を付けるのですが、その後二度と痕跡や信号を捉えられないのです。キツネ達は忽然と消えてしまったのです。つまり飛行機で追跡できる範囲外に出てしまったということです』
あのような過酷な環境において、ホッキョクギツネが何ヶ月も彷徨い続けるという考えには、数多くの謎が残ったままである。(3)動物達が辿る決まった道筋があるのだろうか、それとも旅は行き当たりばったりなのだろうか。もし後者でないというならば、恒久的な目印などなく、海流のなすがままに漂流・回転し、天候によって溶けては凍りつき、食欲を満たすために辿るべき臭いの痕跡に関しても一見ほとんどなさそうに思える氷に閉ざされた世界において、キツネ達はどうやって進路を決定しているのだろう。
1990年代初頭に人工衛星を利用した追跡が可能になってもなお、謎がすぐに解き明かされることはなかった。大きなバッテリーを必要とする初期の首輪はホッキョクギツネには重すぎたのだ。(4)しかし今やっと、ホッキョクギツネに合わせて作られたバッテリー付きの軽い装置という形で、技術が追い付いてきた。この装置には、動物が噛みちぎることを防ぐために、唐辛子が加えられたアンテナを備えたものもある。昨年、バイロト島のキツネを衛星で追跡した研究結果をカナダのチームが発表した。この調査はホッキョクギツネが日常的に途方もない距離を移動しているという更なる証拠を提供している。断言するには尚早だが、キツネ達は秋に陸上でどれだけ食料が獲られるかを一つの基準として、氷上を進むことを決定している可能性がある。
【解答】
(1) 狐達は番号のふられたタグを耳に付けて解放され、その後居場所が記録された。使用された技術の限界のせいで、どのように狐達が様々な場所に到達したのかはほとんど何も解明されなかったが、2000キロも離れた高緯度北極の深部で、幾つかのタグが回収された。
(2) 調査対象となる動物に無線機付き首輪を取り付けるのだが、その首輪から発信される信号を、徒歩あるいは飛行機上の研究者が正確に検知することで、動物がどこに向ったとしても捕捉することができると考えたのである。
(3) 動物達が辿る決まった道筋があるのだろうか、それとも旅は行き当たりばったりなのだろうか。もし後者でないというならば、恒久的な目印などなく、海流のなすがままに漂流・回転し、天候によって溶けては凍りつき、食欲を満たすために辿るべき臭いの痕跡に関しても一見ほとんどなさそうに思える氷に閉ざされた世界において、キツネ達はどうやって進路を決定しているのだろう。
(4) しかし今やっと、ホッキョクギツネに合わせて作られたバッテリー付きの軽い装置という形で、技術が追い付いてきた。この装置には、動物が噛みちぎることを防ぐために、唐辛子が加えられたアンテナを備えたものもある。
【難単語・難熟語】
- Fridtjof Nansen → ノルウェーの学者、探検家、政治家。ノーベル平和賞を受賞している。
- parallel → 緯線
- dry land → (ここでは北極の氷上に対して)陸地
- incomprehensible → 理解できない
- live on A → Aを食べて生きる、Aで生計を立てる
- presumably → おそらく
- snap up → 飛びつく、素早く取る
- waterway → 水路、運河、航路。ここでは北極の氷の切れ目のこと。
- riddle → なぞなぞ、謎
- add to A → Aを強める
- numbered → 番号がふられた、数字が書かれた
- tag → 札、タグ
- numbered ear tag → 個体識別番号の書かれた耳標
- whereabouts → 居場所
- next to nothing → ないに等しい
- high Arctic → 高緯度北極の
- recover → (耳標を)回収する
- valiant → 勇敢な
- telemetry → 遠隔測定法
- wildlife → 野生生物
- via → 〜を通して
- radio → 無線、ラジオ
- collar → 首輪、えり
- on foot → 徒歩の、徒歩で
- with precision → 正確に
- absolutely → まったく、完全に
- mobile → 動き回る、機動力のある
- keep track of A → Aの経過を追う
- on end → 引き続いて、ぶっ続けで
- harsh → 過酷な
- raise questions → 疑問を投げ掛ける、疑問視される
- preordain → 運命を定める、予定する
- random → 行き当たりばったりの、無作為の
- latter → 後者
- icescape → ice氷+scape景色
- navigate → 進路を見つける、通り抜ける
- landmark → 景色の中で目印になるようなもの、ランドマーク
- drift → 漂流する、ふらふらする
- at the mercy of A → Aのなすがままになって
- seemingly → 見た所、外見上は
- in the way of A → (否定的文脈で)Aというものに関して
- scent trail → 臭いの痕跡
- advent → 出現、到来
- battery → 電池、バッテリー
- catch up → 追いつく
- in the form of A → Aという形で
- tailor → (目的・要求などに)合わせる、あつらえる
- discourage A from B → AにBを思いとどまらせる
- gnaw off → 噛みちぎる、噛んで取り外す
- Bylot Island → バイロト島(カナダ北部の無人島)
- enormous → 非常に大きい、(程度が)途方もない
- available → 入手可能な
【読解・解答のポイント】
難易度★★★(1) The animals were fitted with numbered ear tags, released, and their whereabouts were then recorded. Although next to nothing was revealed about how they got to various places, due to limitations of the techniques being employed, deep into the high Arctic, more than 2000 kilometers away, is where some were recovered.
狐達は番号のふられたタグを耳に付けて解放され、その後居場所が記録された。使用された技術の限界のせいで、どのように狐達が様々な場所に到達したのかはほとんど何も解明されなかったが、2000キロも離れた高緯度北極の深部で、幾つかのタグが回収された。
難易度★★★(2) The target may be followed to wherever it goes via a radio collar that is fitted to the animal being investigated, which transmits a signal that researchers on foot or in a plane can detect with precision.
調査対象となる動物に無線機付き首輪を取り付けるのだが、その首輪から発信される信号を、徒歩あるいは飛行機上の研究者が正確に検知することで、動物がどこに向ったとしても捕捉することができると考えたのである。
難易度★★★★(3) Is there some preordained pattern that the animals follow or are the journeys random? If not the latter, how do they navigate in an icescape that offers no permanent landmarks, that drifts and spins at the mercy of the currents, melts and freezes according to the weather, and seemingly has not much to offer in the way of a scent trail to follow for satisfying their appetites?
動物達が辿る決まった道筋があるのだろうか、それとも旅は行き当たりばったりなのだろうか。もし後者でないというならば、恒久的な目印などなく、海流のなすがままに漂流・回転し、天候によって溶けては凍りつき、食欲を満たすために辿るべき臭いの痕跡に関しても一見ほとんどなさそうに思える氷に閉ざされた世界において、キツネ達はどうやって進路を決定しているのだろう。
難易度★★(4) But now, at last, the technology has caught up, in the form of light, battery-powered devices tailored for the Arctic fox, including one equipped with an antenna laced with red pepper to discourage animals from gnawing it off.
しかし今やっと、ホッキョクギツネに合わせて作られたバッテリー付きの軽い装置という形で、技術が追い付いてきた。この装置には、動物が噛みちぎることを防ぐために、唐辛子が加えられたアンテナを備えたものもある。
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