東大過去問 1972年 第1問(要約)

/ 12月 5, 2019/ 東大過去問, 第1問(要約), 過去問/ 10 comments

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  • 難易度★★★☆☆(3/5)
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【目次】

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【問題】

 次の文は英国の物理学者が米国の科学界を視察した際の感想である。その趣旨を80字から100字までの範囲の日本文で書け。ただし句読点も字数に数える。

What the American scientist has, above all, is energy and activity. He is not a shy and unsociable person hidden in the dim corners of a dusty cellar. Not infrequently you will find him crossing the continent by jet plane, giving lectures 1,000 miles from home, or meeting hundreds of others at a conference. There are always people coming and going, ceaselessly discussing the latest experiment or theory, arguing in front of a blackboard or over cups of coffee. There is a thick web of communication so that everyone knows what everyone else is doing, and every bit of scientific knowledge spreads rapidly from one laboratory to another. Of course, all this is extremely valuable, and some people, original, quick-witted, fluent in thought and word, thrive in this atmosphere. Yet I think it has its dangers. Scientific work is not easy, and a really deep idea is unlikely to come in the hour or so that one may spend talking with a particular person on a particular topic. An atmosphere of intellectual bustle is not favourable to quiet concentration, to unhurried experiments, to brooding over a single problem. There is always the temptation to jump on the latest band wagon, instead of making a thorough study of a narrow field. And I am afraid originality seems sometimes to be emphasized too much in America, and is often not easily distinguishable from superficial brilliance.
(注) to jump on the band wagon: to join in what is likely to be a fashionable movement

 

【単語】

  • above all なによりも
  • unsociable 非社交的な
  • dim corners of a dusty cellar 埃っぽい地下室の薄暗い片隅
  • not infrequently しばしば
  • continent 大陸
  • conference 学会、会議
  • ceaselessly 絶え間なく
  • the latest experiment 最新の実験
  • over cups of coffee コーヒーを飲みながら
  • a thick web of communication 緊密なコミュニケーション
  • ~so that… …するように〜、〜の結果…
  • every bit of~ ありとあらゆる〜
  • laboratory 研究室
  • extremely 極端に、とても
  • quick-witted 機知に富んだ、頭の回転が早い
  • fluent in thought and word 思考と弁舌が流暢であること
  • thrive 成功する、繁栄する
  • atmosphere 雰囲気
  • be unlikely to~ 〜しそうにない
  • intellectual bustle 知的なお祭り騒ぎ
  • be favourable to~ 〜に好都合である
  • concentration 集中
  • brood over~ 〜についてじっくり考える
  • temptation 誘惑
  • jump on the band wagon 流行に飛びつく
  • latest 最新の
  • instead of~ 〜のかわりに、〜せずに
  • thorough study of a narrow field 限られた分野について徹底的に研究する
  • emphasize 強調する
  • distinguishable 区別できる
  • superficial brilliance 表面的な優秀さ

 

【和訳】

アメリカ人の科学者は何よりもまず、精力的で活発である。埃だらけの薄暗い地下室の隅に隠れているようなシャイな人でも、人付き合いが下手な人でもない。彼らが飛行機で大陸を横断して、家から1000マイルも離れた所で講演したり、学会で何百人もの人と会ったりしているのを、よく目にする。人々は常に行き来して、最新の実験や理論について絶え間なく議論し、黒板の前で、あるいはコーヒーを飲みながら、論争している。コミュニケーションが緊密に張り巡らされているので、誰もが他人の研究について知っており、ほんのちょっとした科学知識でも全てがすぐに別の研究室に広まる。もちろんこういった事は全て非常に重要である。そしてこういった雰囲気の中では、独創的で、頭の回転が速く、思考と弁舌が流暢な一部の人間が、成功を収めるのである。しかし、私の意見では、こうした事は危険も孕んでいる。科学研究は生易しいものではない。本当に深い思考とは、誰かと、何かの話をしている時などに浮かぶものではない。学問のお祭り騒ぎとでもいうべき雰囲気は、静かな集中や、腰を据えた実験や、一つの問題の熟慮には好ましくない。限られた分野を徹底的に研究する代わりに、いつも最新の流行に飛びつきたくなる誘惑にかられるのである。それに私は、アメリカでは独創性というものが強調され過ぎていて、その独創性が表層的な頭の良さと容易に区別がつかない場合が多いように思う。

 

【解答例】

科学においては、一人で集中し、狭い分野を長期間に渡って実験・研究する事が大切である。しかしアメリカの科学界では、独創性とコミュニケーションと機知が過度に重んじられ、流行に振り回される傾向にある。(96字)
 

【解説】

まずはしっかりと和訳できることが大前提です。「ざっくりと文意をつかめばよい」というような読み方は、東大受験では通用しません。どうしても分からない部分は仕方ないにしても、基本的に全ての文を正確に(かつ速く)読む必要があります。

ですから僕は、要約(第1問)の対策を始める前に、和訳(第4問)に取り組み、おおよそ正解できるようになることを生徒に勧めています。正確に和訳できれば、自ずとしっかりとした要約が書けるはずです。

もし和訳を正確にできるのに要約が出来ないのであれば、国語の勉強をするべきでしょう。 そうは言っても、要約のコツがなかなかつかめない生徒も一定数います。そういう生徒は下のポイントを実践してみましょう。

【要約のポイント①】 まずは一番重要な内容をできるだけ簡単に言ってみる

 

要約の中でもさらに一番大切な部分ですね。つまり要旨の要旨です。それを最初に一言でまとめてみましょう。そうすればポイントを外すことはないですし、ある程度(3〜4割)の点数は貰えるはずです。

以上のことは1971年の要約の解説でも書いたことです。 ただし、この要旨を一言でまとめるというのは、全ての文を正確に理解した上でのことです。英文自体をざっくり理解すればいい、という意味ではありません。完璧に和訳できるレベルでの理解が必要です。

では、この年の文章の一番のポイントはどういったものでしょうか。それは「コミュ力の高いアメリカ人学者が嫌いだ!」というものです。もう少しマイルドな言い方をすると、「アメリカ人科学者達のやり方はよくない」でしょうか。これが要旨の要旨になります。もちろんこんな風に書いたら怒られますが、これを真っ当な表現に直し、肉付けしていくと解答になるわけです。細部に囚われてポイントのずれた要約にならないように気を付けてください。

そしてこの問題は『要約』ではなく、『趣旨』を答えるものです。『趣旨』とは筆者の『言わんとすることと、その理由・目的』です。「アメリカ人科学者のやり方は気に食わない」で終わるのではなく、「正しい科学研究とはこうあるべきだ」ということをしっかり書く必要があるでしょう。

ちなみにこの文はイギリス人の書いたものでしょう。内容から言っても、favourableの綴りからも判断できます。

さて、本文の内容を見てみると、前半はアメリカ人研究者を褒めているように思えます。褒めながらもトゲがあるのを感じ取れるでしょうか。これはイギリス人特有の皮肉でしょう。 この褒めている(ようにみえる)部分をまとめる必要がありますね。

褒めているポイントの中心は『いろいろな所に出向いて、多くの人と話し、最新の情報を仕入れる』ということです。要するにコミュ力です。その結果として、『独創的で、頭の回転が早く、思考と弁舌が流暢な人』が成功すると書かれています。学会で知らない人とすぐに仲良くなれたり、会話が弾んだり、プレゼンが上手い人が成功するんですね。 この辺りがまとめてあれば、細部にこだわる必要はありません。東大の問題を採点をしている人はまともな人です。模試などのいい加減な採点官(学生のアルバイト)とは違います。内容をしっかり把握して書けば、細部の文言が違っても大丈夫です。

『しかし、私の意見では、こうした事は危険も孕んでいる。』から始まる文の後半は、いよいよ批判です。アメリカ人研究者の態度は良くないというんですね。なぜか。 簡単に言えば、(私のように)埃臭く薄暗い地下室の片隅で研究に没頭しろ!というわけです。しっかりした言い方をすれば『1つの問題にじっくりと腰を据えて徹底的に研究しろ』『流行に流されるな』ということですね。

文章の最後にもう一度、アメリカ人の『独創性・表層的な頭の良さ』に言及していますね。表層的な頭の良さsuperficial brillianceとは、上記の『頭の回転が早く、思考と弁舌が流暢であること』と同義でしょう。前半では表面上褒めていたことを、最後に堂々と批判していますね。アメリカでは独創性を重視しているが、それがそもそも過度である上に、『独創的に見えるアメリカ人科学者のほとんどは、奇抜なだけで中身のないアホだ』と言っているわけです。

東大の英語の問題は、古いほどイギリス人の文章が多く、徐々にアメリカ人の文章が増えていきます。そのあたりも時代を反映していて面白いですね。この時代はこのような内容に共感する人も多かったのでしょうが、学問の現状(アメリカの隆盛)を見ていると、アメリカ的なやり方を批判することは難しいでしょう。ともあれ、イギリス人とアメリカ人では思考も文章の書き方も異なります。その辺りも感じ取れるようになるとよいでしょう。

以上のことから、要約に含めるべきことをまとめていきましょう。

  • テーマ:科学の研究とは
  • アメリカ人の研究態度(コミュニケーション・独創性・機知・弁舌の重視)は危険
  • 流行に流されず、狭い分野の問題を徹底的に研究すべき

【要約のポイント④】『テーマ』『時と場所』『結論』『なぜ』を確認する

 

この『テーマ』『時と場所』『結論』『なぜ』をしっかり書いているか、確認してみましょう。 テーマは科学の研究についてです。科学scienceについての言及は必須です。

時は今、あるいは時代を問わず当てはまる(と筆者が考えている)ことなので、特に言及する必要はありません。場所に関して『アメリカ』というワードは必須です。場所と言うよりも、アメリカの研究者についてですね。 この年の問題では『結論』と『なぜ』は特に分ける必要がないでしょう。 そして最後に

【要約のポイント③】要約とは、本文を読んでいない人でも、それを読むだけで内容を把握できるものでなければならない

 

このポイントを満たしているか、自分の解答を書き終えた後に、客観的に確認してみて下さい。

【生徒の答案】

アメリカの科学者が活動的かつ社交的で常に最新の研究を討論するのはよいが、あまりに独創性が重視され、一つの研究にじっくり従事できない環境は危険だと感じた。(76字)

【生徒の答案の採点と添削】

ほぼ完璧です。ですが0点です。80〜100字という指定を満たしていないからです。指定を満たさなければ、採点対象にすらならないかもしれません。読んでもらえないということですね。

この年度のように最低字数が示されていない場合でも、最高字数の8割は書きましょう。基本的に東大要約の字数はギリギリなので、字数が余ったら何かが足りていないと考えるべきです。

内容はとても良いです。必要なポイントはしっかり押さえて簡潔に書いてあります。最後が『感じた』という形で終わっているのは、問題冒頭の『次の文は英国の物理学者が米国の科学界を視察した際の感想である』を受けてのことでしょう。

アメリカ人科学者を批判する形のみでまとめていますが、【解答例】のように、『アメリカ科学者への批判』と『研究のあるべき姿』の両面から書けば、批判だけでないポジティブな内容になりますし、字数も稼げたのではないでしょうか。

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10 Comments

  1. 米国の学者は活動的で、学者同士が最新の成果について盛んに情報共有する。このことは有益だが危険でもある。深い探求を要する科学で流行を求めすぎると、独自性と表面的な明晰さを混同する恐れがある。(94字)

    1. Hiroakiさん、コメントありがとうございます。

      毎回しっかりした解答ですごいですね。知性を感じる文です。これを時間内に、辞書を引かずに書けていたとすれば、十分な実力があると思います。

      直すとすれば最後の部分になります。米国の学者達の態度が危険なのは『独自性と表面的な明晰さを混同してしまう』からだと言うのは、スッキリしない感じがします。本文最後に『アメリカでは独創性が強調されすぎている』とあるように、そもそも筆者は独創性自体それほど重視していません。また『流行を求めすぎた』結果、『独自性と表面的な明晰さを混同してしまう』という因果関係も不明確です。

      この問題は『要約』ではなく、『趣旨』を答える問題です。『趣旨』とは筆者の『言わんとすることと、その理由・目的』です。本文は米国人科学者に対する批判に多くの部分が費やされていますが、その『趣旨』は『正しい科学研究はどうあるべきか』ということではないでしょうか。あなたの解答にも『深い探究を要する』とありますが、もう少しそちら側に字数を割くことでバランスの良い解答になると思います。

      僕が採点官であれば、7割ほどの点をつけるでしょうか。ただし『正しい科学研究はどうあるべきか』の方をしっかり書ける生徒はほどんどいないようですから、現実的にはもっと高得点になるかもしれません。

  2. こちらこそ、いつもながら的確なご指摘、誠にありがとうございます。お見通しの通り、最後の一文はいわば苦し紛れの文章でした。著者の主張が完全には把握できていなかったのが主因と思います。
    ご指摘と、和訳を熟読して答案を練り直してみました。

    米国の学者は活動的で、学者同士が最新の成果について盛んに情報共有する。このことは流行の研究を進める上では有益だが、本来特定の分野における深い探求を要する科学においては危険でもある。(90字)

    1. ありがとうございます。

      満点の解答だと思います。本文とのうまく寄り添っているので、当サイトの解答例よりもよいと思います。

    2. 米国の科学者は精力的かつ活動的であり、科学者間の連携によって研究内容の共有が速い。これは利点となる一方で、特定分野の細かい研究をするよりも流行に乗ってしまいがちという欠点でもある。(91文字)

      科学研究のあるべき姿と言う本題に触れられず、また独創性もどう組み込めば良いかわからず削ってしまったので、これだとかなり厳しいでしょうか…

      1. tatsuyaさん、コメントありがとうございます。

        良い解答だと思います。7点程度貰えるのではないでしょうか。『間違った事を書いていない』『字数を守っている』『概ねポイントを外していない』『しっかりとした文である』ということが守られている解答が意外と少ないのですが、tatsuyaさんの解答は合格レベルに達していると思います。

        直すとすれば、ご自身で感じている通りの部分です。英文の前半部分に注意が偏っていることが感じられる解答になっているので、最初に英文を読む段階から、より俯瞰的に文章を捉える癖を付けると良いかもしれません。

        『科学者間の連携によって研究内容の共有が速い』はやや冗長です。『研究内容の共有が速い』だけで良いでしょう。また『精力的』と『活動的』も内容が近く、どう精力的・活動的なのかといえば、つまり『積極的にコミュニケーションを取る』ということなので、もう少しまとめて、『頭の回転が速く、思考と弁舌が流暢(機知)』『独創性』に言及した方が良いでしょう。

        また科学のあるべき姿に関して『特定分野の細かい研究をする』だけになっているのが、少し弱いとも感じます。これもご自身で書かれている通りですね。

        ですが、全体としてまとまっていて、合格には十分な解答だと思います。

        1. 丁寧な講評ありがとうございます。参考になりました。

  3. 重ねての、また過分なコメントありがとうございます。

  4. 初めてコメントさせていただきます。
    14行目のthat one may spend talking〜topic.のthatは前半部のa really deep ideaの同格とは考えられないですか?

    1. Scientific work is not easy, and a really deep idea is unlikely to come in the hour or so that one may spend talking with a particular person on a particular topic.

      『科学研究は生易しいものではない。本当に深い思考とは、誰かと、何かの話をしている時などに浮かぶものではない。』

      上記の文に関して、『that以降がa really deep ideaと同格と考えられるかどうか』とのこと、なかなか鋭い質問だと思います。

      that以下は完成された節なので、名詞との同格と考える所まではよいでしょう。であれば、候補はthe hourかa really deep ideaかscientific workの3択ということになります。

      基本的な考え方として、この3択のうち最も有利なものは、語の順序的にthat以降と最も近いものです。これは指示語に関しても同様のことが言えます。遠いものと繋がるには、特段の事情が必要になります。近くにあるものが明らかに間違いであるということです。これだけでもthe hourが圧倒的に優勢です。the hourと同格に訳してみて違和感がなければ、他の選択肢は考慮する必要すらないということになります。

      ここでは、that以下は『おしゃべりをして過ごす』という意味なので、それをthe hourとa really deep ideaとscientific workの3者と同格の形になるように訳してみましょう。

      1. おしゃべりをして過ごす時間
      2. おしゃべりをして過ごす考え
      3. おしゃべりをして過ごす仕事

      1のthe hourが最も近くにあり、かつ意味としても適切であることが分かると思います。that節の中が『過ごす』という意味であり、それと同格なので、自然とhourに繋がるんですね。

      これだけでもthat以下がthe hourと同格である十分な理由ですが、仮にthat以下がa really deep ideaと同格であるとすると、the hour or soが意味的に浮いてしまいます。

      a really deep idea is unlikely to come in the hour or so『本当に深い思考とは『そうした時間』にはやってこない』

      だけでは、不自然です。the hour or so『そうした時間』がどういったものなのか説明しないと意味をなしません。もちろんthe hourについて、前文で説明されていれば良いのですが、そうした記述は前文にも、さらにその前の文にもありません。『人々は常に行き来して、最新の実験や理論について絶え間なく議論し、黒板の前で、あるいはコーヒーを飲みながら、論争している』という部分まで遡れば、the hourの内容を説明しているような気もしますが、それは遠すぎます。読者にとっても筆者にとっても、記憶が薄れてしまっているので、いまさらthe hourと言われてもピンとこないんですね。

      英文に慣れた人であれば、the hour『その時間』の語を読んだ瞬間に、『このthe hourは説明されていない』→『後ろにこのhourを説明するなんらかの要素があるはず』と感じながら読むことになります。ですから、今回説明した3択の可能性を考慮しなくても、前から読み下しているだけで判断がつくわけです。

      いかがでしょうか?

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