京大過去問 2021年 第2問(英文和訳)

/ 6月 7, 2021/ 和文英訳, 京大過去問, 難易度★★★★★, 対称, 動詞の名詞化を解除, 前置詞+関係代名詞, “ダブルコーテーション”, 無生物主語, 構造が見えにくい, 入れ子構造, コロンとセミコロン/ 1 comments

  • 解答は下部にあります。
  • 下のリンクから問題文をPDFで印刷できます。
  • 間違いの指摘・添削依頼・質問はコメント欄にどうぞ。

【問題】

次の文章を読み、下の設問(1)~(3)に答えなさい。

One of the early significant responses to Charles Darwin’s thinking came from a highly-talented journalist, George Henry Lewes. Having read a piece by Lewes, Darwin wrote to a friend, saying that the author of that article is “someone who writes capitally, and who knows the subject.” Indeed, as a modern scholar states, “apart from Thomas Huxley, no other scientific writer dealt with Darwin’s theory with such fairness and knowledge as Lewes” at that time. Here is what Lewes wrote (with modification) about the background of Darwin’s most famous book:
 
The Origin of Species made an epoch. It proposed a hypothesis surpassing all its predecessors in its agreement with facts, and in its wide reach. Because it was the product of long continued research, and thereby gave articulate expression to the thought which had been inarticulate in many minds, its influence rapidly became European; because it was both old in purpose and novel in conception, it agitated the schools with a revolutionary excitement. No work of our time has been so general in its influence. This extent of influence is less due to the fact of its being a masterly work, enriching science with a great discovery, than to the fact of its being a work which clashed against one and chimed with the other of the two great conceptions of the world that have long ruled, and still rule, the minds of Europe. One side recognized a powerful enemy, the other a mighty champion. It was immediately evident that the question of the “origin of species” derived its significance from the deeper question which loomed behind it. What is that question?
(a)If we trace the history of opinion from the dawn of science in Greece through all succeeding epochs, we shall observe many constantly-reappearing indications of what may be called an intuitive feeling rather than a distinct vision of the truth that all the varied manifestations of life are but the flowers from a common root — that all the complex forms have been evolved from pre-existing simpler forms. This idea about evolution survived opposition, ridicule, refutation; and the reason of this persistence is that the idea harmonizes with one general conception of the world which has been called the monistic because it reduces all phenomena to community, and all knowledge to unity. This conception is irreconcilable with the rival, or dualistic, conception, which separates and opposes force and matter, life and body. The history of thought is filled with the struggle between these two general conceptions. I think it may be said that every man is somewhat by his training, and still more by his constitution, predisposed towards the monistic or the dualistic conception. There can be little doubt that the acceptance or the rejection of Darwinism has, in the vast majority of cases, been wholly determined by the monistic or dualistic attitude of mind.
(b)And this explains, what would otherwise be inexplicable, the surprising ease and passion with which men wholly incompetent to appreciate the evidence for or against natural selection have adopted or “refuted” it. Elementary ignorance of biology has not prevented them from pronouncing very confidently on this question; and biologists with scorn have asked whether men would attack an astronomical hypothesis with no better equipment. Why not? They feel themselves competent to decide the question from higher grounds. Profoundly convinced of the truth of their general conception of the world, they conclude every hypothesis is to be true of false, according as it chimes with, or clashes against, that conception.
So it has been, so it will long continue. The development hypothesis is an inevitable deduction from the monistic conception of the world; and will continue to be the battle-ground of contending schools until the opposition between monism and dualism ceases. For myself, believing in the ultimate triumph of the former, I look on the development hypothesis as one of the great influences which will by its acceptance, in conjunction with the spread of scientific culture, hasten that triumph.
 
Darwin seems to have liked Lewes’s observations on his work, for when he read this and other related pieces, he wrote to the journalist and encouraged him to publish them in a book form. Although from the point of view of today’s science what he says may be dated, Lewes remains a highly interesting writer.
 
(1) 文章全体から判断して、『種の起源』が大きな影響力を持った要因としてLewesが最重要視しているものを、第2パラグラフ(The Origins of Species からWhat is that question?まで)から選び、日本語で書きなさい。
(2) 下線部(a)を和訳しなさい。
(3) 下線部(b)を和訳しなさい。
 

【和訳】

チャールズ=ダーウィンの考えに対する初期の重要な反応の一つは、才能あふれるジャーナリストであるジョージ=ヘンリー=ルイスによるものだった。ルイスの記事を読んだ後、ダーウィンは友人に手紙を書き、記事の筆者は『見事に書いており、このテーマについて分かっている』、と述べている。実際、ある現代の学者も、当時は『トーマス=ハクスリーを別にすれば、ダーウィンの理論を扱った科学ジャーナリストの中で、ルイスほど公平かつ博識な者はいなかった』と述べている。ルイスがダーウィンの最も有名な本の背景について書いた文章を以下に示す(修正されている部分あり)。
 
『種の起源』は画期的だった。事実に即しているという点、対象が広範囲にわたるという点において、それまでのあらゆる仮説を凌ぐ仮説を提唱した。それは長期間にわたる研究の成果であり、それにより多くの人がぼんやりと考えていたことに明確な表現を与えたため、その影響は急速にヨーロッパに広がった。それは目的という点では古来からのものであると同時に、着想という点では斬新であったために、研究者達を動揺させ、革命的な興奮を巻き起こした。我々の時代でこれほど影響が広範な著作はなかった。これほどの影響力を持つに至ったのは、それが見事な著作であり、偉大な発見によって科学を発展させたからという以上に、ヨーロッパの精神を長く支配し、今でも支配している2つの強固な世界観のうちの1つと対立し、もう1つと調和していたという事実が原因である。一方はそれを強大な敵とみなし、もう一方は強力な味方とみなしたのである。『種の起源』という問いの重要性は、その背後に潜む一層深遠な問いに起因していることが、すぐに明らかになった。ではその問いとは何だろうか。
(a)ギリシアにおける科学の黎明期から、その後のあらゆる時代を通しての思想の歴史を辿ってみると、多種多様な生命の出現は全て共通の根から生じる花に過ぎない、つまり全ての複雑な形態は以前から存在しているより単純な形態から進化してきたのだという真理を、明確な見解としてではなくいわば直観的に感得したとも言うべき説が、入れ替わり立ち替わり何度も指摘されてきた事が分かる。こうした進化に関する考えは反対にあい、嘲笑され、反駁されながらも途絶えることはなかった。そうした考えは、あらゆる現象を一般的なものに還元し、全ての知識に統一をもたらす点において、一元論的と呼ばれる世界観と相性が良いために、こうして存続してきたのである。この世界観は競合相手である二元論的な世界観、つまり力と物質や生命と肉体を対立させるような考え方と相入れることはない。思想の歴史はこの2つの大きな世界観の間の闘争で満ちている。あらゆる人が教育によって、あるいはそれ以上に環境によって、一元論か二元論のどちらか一方にいくらか寄っていると言えるかもしれない、と私は考えている。ダーウィニズムを受容するか拒絶するかは、ほとんど全ての場合において、精神的態度が一元論的であるか二元論的であるかによって完全に決定されるということは、ほぼ疑う余地がない。
(b)そして自然淘汰に対する証拠あるいは反証を理解する能力が全くない人々が、驚くほど簡単に、驚くべき情熱を持って、それを受け入れたり『反論』してきたことを、このことによって説明できるし、またそれ以外に説明のしようがないだろう。生物学の基礎的な知識が欠けている場合でも、そうした人々はこの問題について自信たっぷりに意見を述べるのを止めようとしない。そして生物学者は軽蔑を込めて、そうした人々は天文学の仮説に対しても、同程度に予備知識がない状態でも批判を繰り広げるのだろうか、と疑問を投げかけてきた。当然、そうした人が批判を止めることはないだろう。そうした人々は、自分がより高い見地からその問題を判断する能力を有していると感じている。自身の世界観の正しさを信じ切っているために、その世界観に調和するか矛盾するかによって、あらゆる仮説に結論を下す。
問題はそのように続いてきたし、これからも長く続くだろう。進化論は一元的な世界観からすれば必然の帰結であり、一元論と二元論の対立が止むまでは、これからも相争う学派の論争の的となるだろう。最終的に前者が勝利すると信じている私としては、進化論をこの上なく大きな影響を持つものとみなしている。そして進化論を受け入れる事は、科学的文化を普及させるのみならず、一元論の勝利を早めるだろう。
 
ダーウィンは、ルイスが著作を通じて表明した意見を好ましく思ったようだ。というのも、ダーウィンはこの文章やその他の関連する著作を読んだ時、ルイスに手紙を書いてそれらを書籍として出版するように勧めたのだ。現在の科学の観点からすれば、ルイスの言っていることは時代遅れかもしれないが、彼が極めて興味深いライターであることは変わりがない。
 

【解答】

(1) ヨーロッパの精神を長く支配し、今でも支配している2つの強固な世界観のうちの1つと対立し、もう1つと調和していたという事実。
(2) ギリシアにおける科学の黎明期から、その後のあらゆる時代を通しての思想の歴史を辿ってみると、多種多様な生命の出現は全て共通の根から生じる花に過ぎない、つまり全ての複雑な形態は以前から存在しているより単純な形態から進化してきたのだという真理を、明確な見解としてではなくいわば直観的に感得したとも言うべき説が、入れ替わり立ち替わり何度も指摘されてきた事が分かる。
(3) そして自然淘汰に対する証拠あるいは反証を理解する能力が全くない人々が、驚くほど簡単に、驚くべき情熱を持って、それを受け入れたり『反論』してきたことを、このことによって説明できるし、またそれ以外に説明のしようがないだろう。生物学の基礎的な知識が欠けている場合でも、そうした人々はこの問題について自信たっぷりに意見を述べるのを止めようとしない。そして生物学者は軽蔑を込めて、そうした人々は天文学の仮説に対しても、同程度に予備知識がない状態でも批判を繰り広げるのだろうか、と疑問を投げかけてきた。当然、そうした人が批判を止めることはないだろう。
 

【難単語・難熟語】

  • significant → 重要な
  • talented → 才能のある
  • capitally → 素晴らしく、見事に
  • make an epoch → 新時代を拓く
  • surpass A → Aを上回る、Aよりまさる
  • predecessor → 以前のもの
  • in agreement with~ → 〜と一致して
  • wide reach → 広範囲
  • thereby → それによって
  • articulate → (思考が)明確な
  • novel → 斬新な、革新的な
  • conception → 着想、構想
  • agitate → 煽動する、動揺させる、興奮させる
  • school → 学派
  • general → 全体的な
  • masterly → (形容詞)見事な、名人の
  • enrich → 豊かにする
  • clash against A → Aと衝突する、対立する
  • chime with A → Aと調和する
  • recognize → 認識する、みなす
  • mighty → 強力な
  • champion → 擁護者、支持者
  • derive A from B → BからAを引き出す
  • significance → 重要性、意義
  • loom → ぼんやりと現れる、不気味に浮かび上がる
  • dawn → 夜明け、黎明期
  • succeeding → 次の、後の
  • epoch → 時代、時期
  • constantly-reappearing → しょっちゅう再登場する
  • indication → 兆候、指摘
  • intuitive → 直感の
  • varied → 様々な、変化に富んだ
  • manifestation → 現れ、出現
  • form → 形態
  • survive A → Aの後も生き残る
  • opposition → 反対、抵抗
  • ridicule → 嘲り、嘲笑
  • refutation → 反駁
  • monistic → 一元論の、一元的な
  • reduce A to B → AをBに還元する
  • phenomena → phenomenon『現象・外象』の複数形
  • irreconcilable → 相容れない、調和しない
  • dualistic → 二元論の
  • oppose → 対立させる
  • constitution → 体質、組織
  • predisposed toward~ → 〜の傾向にある
  • wholly → 全面的に、完全に
  • otherwise → 別の方法で、そうでなければ
  • inexplicable → 説明しがたい
  • incompetent to~ → 〜する能力がない
  • elementary → 初歩的な
  • pronounce → 意見を述べる
  • equipment → 能力、知識
  • higher ground → 有利な場所
  • competent → 能力がある
  • profoundly → 大いに、深く
  • hypothesis → 仮説
  • deduction → 推論、演繹
  • contend → 争う、論争する
  • opposition → 対立
  • battle ground → 争いの場、論争の的
  • former → 前者
  • look on A as B → AをBとみなす
  • in conjunction with A → Aと併せて、Aと同時に
  • dated → 時代遅れの
  • observation → 意見
 

【読解・解答のポイント】

難易度★★★★★No work of our time has been so general in its influence. This extent of influence is less due to the fact of its being a masterly work, enriching science with a great discovery, than to the fact of its being a work which clashed against one and chimed with the other of the two great conceptions of the world that have long ruled, and still rule, the minds of Europe.

我々の時代でこれほど影響が広範な著作はなかった。これほどの影響力を持つに至ったのは、それが見事な著作であり、偉大な発見によって科学を発展させたからという以上に、ヨーロッパの精神を長く支配し、今でも支配している2つの強固な世界観のうちの1つと対立し、もう1つと調和していたという事実が原因である。

 

難易度★★★★★If we trace the history of opinion from the dawn of science in Greece through all succeeding epochs, we shall observe many constantly-reappearing indications of what may be called an intuitive feeling rather than a distinct vision of the truth that all the varied manifestations of life are but the flowers from a common root — that all the complex forms have been evolved from pre-existing simpler forms.

ギリシアにおける科学の黎明期から、その後のあらゆる時代を通しての思想の歴史を辿ってみると、多種多様な生命の出現は全て共通の根から生じる花に過ぎない、つまり全ての複雑な形態は以前から存在しているより単純な形態から進化してきたのだという真理を、明確な見解としてではなくいわば直観的に感得したとも言うべき説が、入れ替わり立ち替わり何度も指摘されてきた事が分かる。

 

難易度★★★★★And this explains, what would otherwise be inexplicable, the surprising ease and passion with which men wholly incompetent to appreciate the evidence for or against natural selection have adopted or “refuted” it. Elementary ignorance of biology has not prevented them from pronouncing very confidently on this question; and biologists with scorn have asked whether men would attack an astronomical hypothesis with no better equipment. Why not?

そして自然淘汰に対する証拠あるいは反証を理解する能力が全くない人々が、驚くほど簡単に、驚くべき情熱を持って、それを受け入れたり『反論』してきたことを、このことによって説明できるし、またそれ以外に説明のしようがないだろう。生物学の基礎的な知識が欠けている場合でも、そうした人々はこの問題について自信たっぷりに意見を述べるのを止めようとしない。そして生物学者は軽蔑を込めて、そうした人々は天文学の仮説に対しても、同程度に予備知識がない状態でも批判を繰り広げるのだろうか、と疑問を投げかけてきた。当然、そうした人が批判を止めることはないだろう。

(Visited 13,697 times, 2 visits today)
Share this Post

1 Comment

  1. 質問です。
    下線部bの最終文”Why not?”の省略されている部分なのですが”Why don’t they attack an astronomical hypothesis with no better equipment? ”ではなく”Why has elementary ignorance of biology not prevented them from pronouncing very confidently on this question?” だと自分は思い、「なぜ、生物学の基礎すらない人が自分の考えを自信をもって言えるのか?」と訳しました。どうして反語的表現なのか、どうして筆者の皮肉ととれるのか教えていただきたいです。

Leave a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*
*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)