センター本試験 1995年度 第6問 和訳・解答
【和訳】
私の息子と私は自分達で改修した家を売ろうとしていたが、家に付属している小屋には蝙蝠がいて、どうしても出ていかなかった。小屋はやつらの家だったのだ。やつらはやつらなりの方法でそう主張していた。彼らは小屋にしがみ付いて、季節が過ぎるまだは居座る決心を固めているようだった。
もしも誰かが外から軽くノックをしたら、まるで蝙蝠が怒っているかなような、ブツブツいう音がそれに続いただろう。やつらは自分達の邪魔をしないように、そしてやつらが自分達が出入りする窓ガラスを取り替えないように、私達に求めているようだった。
「心配いらないよ、お父さん」パトリックは言った。「やつらは蚊を減らしてくれているんだし」
不幸なことにやつらは家の買い手まで遠ざけていた。私達が家を売ってくれる不動産業者に頼んだ時は、蝙蝠のせいでそれを公開するのを拒まれた。実際、私も同感だった。誰がドラキュラの従兄弟と同居したいと思うだろう?
「蝙蝠は人気なんだよ」パトリックは請けあった。「やつらはエコなんだ」
「蝙蝠を追っ払うような高周波の音を出す、お前が買える機械がないものかな?」
「分からないけど」パトリックは言った。「僕は蝙蝠が好きだよ。それにこの家に住む人ならみんな、多分やつらを好きになるよ」
「多分?」私はその言葉が嫌いだった。「結局、何匹の蝙蝠がいるんだい?」
「昨晩は90匹くらいまで数えたよ」パトリックは言った。「やつらは屋根の端の下から外へ飛び立っていたんだ」
「外にはもっといるっていうのかい?」
「そこら中にいるよ、お父さん。でもこんな風に考えてみてよ。寒い天候になったら、やつらはメキシコに行っちゃうよ。春にはやつらが入ってこないようにできるかもしれない。心配いらないよ」彼はお決まりのその言葉を口にした。「問題ないよ」
私が連絡した専門家はパトリックよりも蝙蝠好きだった。「そこには大群がいるようですね」彼は驚嘆して言った。「私は25年間、蝙蝠を自宅に惹きつけようとしてきたんですよ。蝙蝠は一匹で、一晩に3回も自分の体重と同じだけの蚊とブヨを平らげるんです。やつは飛び回って、食べ、消化して、もっと食べようとしてまた出ていくんです。あなたは本当に幸運な人ですね」
私は私の幸運を彼と分かち合いあえないかと申し出てみた。彼なら蝙蝠達を連れていってくれるかもしれないと思ったのだ。
「蝙蝠は驚くべき帰巣本能をもっているんです」彼は言った。「やつらは100マイル輸送されたとしても、真っ直ぐに戻ってくるでしょう。いったん住み着いてしまうと、戻ってくるのを止めることはできないですよ」私は黙りこんだ。彼は私を元気付けるように続けた。「この辺りに残されている蝙蝠の数グループのうちの1つが、あなたの所にいるのかもしれないですね。やつらは絶滅しかかっているんですよ」彼はもう一度言った。「あなたは幸運な人だ」
私は自分の幸運を誇れる気はしなかった。もしも買ってくれそうな人が蝙蝠の糞で汚れた小屋の床に気が付いて「ああ、ネズミがいるんですね」と言ったとしたら、私はただ笑って頷くだけだろう。あるいはこんな風に言えば良いのだろうか。
「本当にあれは蝙蝠のしたものなんです。私達は幸運でして。蝙蝠の大群がいるんですよ。まさにここに。何千匹もいます。毎年増えて、戻ってきます。やつらはとても貴重なんです。一匹でおよそ千匹もの虫を食べるんです。何匹かご覧にいれましょうか?蝙蝠の赤ちゃんは本当に可愛いですよ」私がこんな風に述べ立てたとして、一体誰が聞いていてくれるだろう。
やっとの事で私達は若い家族にその家を貸すことができた。彼らはそれを買うことも検討していた。
「蝙蝠の件はどうなんだ?」私はパトリックに言った。
「ああ、彼らは蝙蝠が好きなんだよ」彼は言った。「蚊がいないし、ブヨもいない。それが彼らがこの家を気に入ってる理由の一つなんだ。」
「彼らが本当に家を買ってくれると思っているのかい?」
「多分ね」
「多分だって?そうだな、もし仮に彼らが家を買ってくれたら、私は自分が間違っていたと認めなきゃいけなくなるだろうね」
「その時は前言撤回するって意味かい?」
「そうだね」
【解答】
[A]
問1 ①
問2 ④
問3 ②
問4 ①
問5 ②
[B] ③,④,⑤,⓪
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