京大過去問 1997年 第2問(英文和訳)

/ 9月 25, 2020/ 英文和訳, be to 不定詞, 京大過去問, 難易度★★/ 3 comments

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【問題】

次の文の下線をほどこした部分(1)~(3)を和訳せよ。

In 1609, two men, independently of each other, looked at the moon through a new invention from the Netherlands: the telescope. The first man, in July 1609, was Thomas Harriot of London, an accomplished mathematician and astronomer. The other man, several months later, was Galileo, a forty-five-year-old professor of mathematics at the University of Padua.
(1)Luckily, we have some record of what each of these two men thought he observed, and it is instructive to compare their private notes, if we are to understand the reasons for the great differences between them. Of course, both men knew that from the time of Aristotle the moon was thought to be a perfectly smooth sphere made of a celestial substance, the symbol of the incorruptible universe beyond Earth. But this was problematic. To the naked eye some areas of the real moon appeared to be darker than others. Thomas Harriot called it “that strange spottedness.” By the seventeenth century, several theories had sprung up to deal with the problem. But no one had reason to question the supposedly perfect sphericity of the moon.
Among Thomas Harriot’s papers is drawing in which he traces the division between the dark and illuminated portions of the moon. But Harriot makes no comment on why he finds it to be not the smooth curve that one would expect on a perfect sphere but rather a jagged line. (2)Harriot sees, but the current presuppositions make it difficult for him to undertake the intellectual transformation, to cross from sense experience to a new way of understanding.
Galileo enters the story in late November 1609. Through his telescope he carefully observed the moon for several weeks as it went through its phases. It was risky to place much trust in a new instrument in such a context. The telescopes, and indeed the theory of optics itself, were primitive. Some who were allowed to look through Galileo’s telescope failed to see what he was trying to show. And in any case, philosophers thought that any optical instrument would by its nature distort reality.
But Galileo’s own confidence grew quickly. As his skillful drawings show, he too saw the jagged line, but he was also alert to an important new phenomenon, namely, numerous small, bright areas within the dark part of the moon, as well as many dark areas in the bright part. (3)They changed in appearance during a period of 2 or 3 hours as the angle of the sunlight changed, and that led Galileo to the astonishing idea that those small bright and dark areas represented respectively prominences and cavities, just like the mountains and valleys on earth : “Bright ridges of mountains rise loftily out of the darkness.” So, the moon’s surface was irregular rather than smooth! On January 7, 1610, he wrote that he now believed there was no qualitative difference between the earth and the moon.
As Galileo’s sensational findings spread through Europe, they transformed what other scientists saw. Thomas Harriot raised his telescope again in July 1610; having now read Galileo’s book of 1610, he made a sketch of his new observation. Now he, too, saw craters and other earth-like features and even some that were not in Galileo’s published sketches.
 

【和訳】

西暦1609年、二人の男がそれぞれ別個に、オランダの新しい発明である望遠鏡を通して、月を観ていた。一人目の男は、ロンドンの卓越した数学者で天文学者のトマス=ハリオットであり、1609年の7月だった。もう一人は、45歳のパドバ大学の数学教授であるガリレオで、トマスに遅れること数ヶ月だった。
(1)幸運なことに、彼らそれぞれが観測したと考えたものの記録が残っており、もし彼らの間に決定的な違いが生じた理由を理解しようとするのであれば、彼らの私的なメモを比較することが役に立つ。もちろん、アリストテレスの時代から月は天上の物質でできた完璧に滑らかな球体、つまり地球を超えた揺るぎない宇宙の象徴だと考えられていることは、二人も知っていた。しかしこれには問題があった。肉眼で見ると、実際の月の一部は、他の部分よりも暗いように見えたのである。トマス=ハリオットはこれを『あの不思議な斑点』と呼んだ。17世期までに、この問題に対処するための幾つかの説が生み出されていた。しかし月は完全な球体であるという想定に疑義を差し挟もうと考えるものはいなかった。
トマス=ハリオットの書類の中に、彼が月の明部と暗部の境目を写生したものがある。しかしハリオットは、なぜそれが完全な球体上に予想されるような滑らかな曲線ではなく、ギザギザの線に見えたかについて、注釈を施していない。(2)ハリオットは確かに見た。しかし彼は、当時普及していた先入観に阻まれて、知的な転換に乗り出す、つまり感覚的な体験を端緒として新たな認識方法へと到達する、ということができなかったのである。
1609年の11月の下旬、ガリレオがこの物語に登場する。彼は自身の望遠鏡を通して、月が満ち欠けする様を数週間にわたって丁寧に観測した。このような状況で、新しい器具に過剰な信頼をおくのは危険であった。望遠鏡、そして実の所光学自体、極めて原始的なものであった。ガリレオの望遠鏡を覗くことを許された幾人かの人も、彼が見せようとしたものを見ることはできなかった。またいずれにせよ、どんな光学機器も本質的に現実を歪めるものだと、哲学者達は考えていたのである。
しかしガリレオの内なる自信は急速に膨らんでいった。彼の熟達した写生が示すように、彼もまたギザギザの線を観たが、同時に彼は、新しい重要な現象、つまり月の暗部の中に無数の小さな明部があり、明部の中にも同様に多くの暗部がある、ということに注意を向けた。(3)それらは太陽光の角度が変わるにつれ2,3時間で外観が変化するということに基づいて、ガリレオは、そうした小さな明部や暗部はそれぞれが、ちょうど地球上の山と谷のように、突出部と陥没部を表しているという驚くべきアイデアにたどり着いた。『山脈の明るい尾根が暗闇から高く突き出している』。だから月の表面は滑らかでなく、デコボコしているのである。1610年の1月7日に彼は、地球と月とは質的な違いはないと今は考えている、と書き記している。
ガリレオのセンセーショナルな発見の数々がヨーロッパ中に広まると、他の科学者達の目に映るものも変化した。トマス=ハリオットは自身の望遠鏡を1610年の7月に再び持ち出した。その時には1610年のガリレオの本を読んでおり、自身の新しい観測をスケッチした。今度はクレーターやその他の地球に似た特徴、さらにはガリレオの出版したスケッチにも載っていない特徴までもが、彼にも見えたのである。
 

【難単語・難熟語】

  • celestial 天体の、神々しい
  • corruptible 堕落しやすい
  • supposedly おそらく
  • jagged ギザギザの
  • presuppose 推定する、仮定する
  • phase (月の満ち欠けの)相
  • optics 光学
  • prominence 突出部
  • cavity 穴、陥没部
  • ridge 尾根
 

【読解・解答のポイント】

  • 内容は多くの生徒に馴染みがあるであろうガリレオについてであり、文構造・単語もそれほど難しくない。
  • (1)は模範的な問題。関係代名詞を正確に捉えているか、instructiveという大切な語の意味を知っているか、be to不定詞を理解しているか。丁寧に読む習慣がついているかどうかがはっきり分かる問題。
  • (2)は文構造を掴むのは難しくないが、うまく日本語にまとめるのが難しい。形式目的語のit、cross A from Bが見えない受験生はいないだろうから、その後の日本語が意味の通らない逐語訳になっていないかが重要になる。
  • (3) 平易。prominenceとcavityを知らなかったとしても、mountainとvalleyに対応することは明らかなので、うまく乗り切れるはず。

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3 Comments

  1. こんにちは。こちらの問題のpdfを印刷したいのですが、リンクが貼られていないようです。お手数ですが、リンクを貼っていただけないでしょうか。

    1. ご指摘ありがとうございます。

      リンクを貼っておきました。ご指摘ありがとうございました!

      1. こちらこそありがとうございます。活用させていただきます!

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