京大過去問 2001年 第1問(英文和訳)

/ 10月 22, 2020/ 英文和訳, 京大過去問, 難易度★★, 構造が見えにくい/ 0 comments

  • 解答は下部にあります。
  • 下のリンクから問題文をPDFで印刷できます。
  • 間違いの指摘・添削依頼・質問はコメント欄にどうぞ。

【問題】

次の文の下線をほどこした部分(1)~(3)を和訳せよ。

There is no point in philosophy unless it helps dispel mental sufferings. Originally the philosopher’s role was like that of today’s psychiatrist — to provide answers to how we are to live. In fact, modern psychiatry, whether it knows it or not, is carrying out some of the great philosopher’s most fundamental beliefs.
Consider Epicurus. Here was a man prepared to confront the question, what does it take to make a man happy? His answer includes: friendship; freedom; a willingness to analyze and reduce anxieties about such things as death, illness, and money. The capacity of money to deliver happiness, he insisted, is present in small salaries but will not rise with the largest. (1)A recently published book by an eminent sociologist describes a number of studies which have indeed shown that once a person’s income is above the poverty level, an increasingly larger one contributes next to nothing to happiness. Quite the reverse happens: as wealth accumulates, family solidarity and community bonding disintegrate.
(2)Seneca* can be referred to for advice on coping with hardships, and actually he has much to say of relevance to such contemporary stupidities as violence observed in some soccer fans. He sees anger as a kind of madness, given that what makes us angry tends to be the frustration of dangerously optimistic ideas about the world and other people. In this modern world of affluence, effective medicine, and a political system devoted to shepherding us safely from the cradle to the grave, we do not anticipate evils before they arrive. The wise man always considers what can happen, and because we are injured most by what we do not expect we must expect everything to happen. Socrates also offered this advice: “If you wish to put off all worry, assume that what you fear may happen is certainly going to happen.”
Men are seduced by the trappings of wealth, power, status, and possessions, but the secret of a fulfilled and satisfied life is the wisdom to know what will truly make us happy. (3)Montaigne** believed in the superiority of wisdom — knowing what helps us live happily and morally — over mere learning. Education that makes us learned but fails to make us wise is, in his scheme of life, quite simply absurd. Would that he were living at this hour.
*Seneca セネカ(古代ローマの思想家)
**Montaigne モンテーニュ(16世紀フランスの思想家)
 

【和訳】

精神的な苦しみを取り除く助けとならないのであれば、哲学に価値はない。元来哲学者の役割とは、現代で言う所の精神科医のようなものであった。つまりいかに生きるべきかという問いに答えるものであった。実際、現代の精神医学では、知ってか知らずか、偉大な哲学者の最も根本的な信念を実践している。
エピクロスについて考えてみよう。彼は『人を幸せにするには何が必要か』という問いに向かい合う覚悟のできた男であった。彼の答えは『友情』『自由』『死や病や金といった問題を分析し軽減しようとする意欲』といったものであった。彼の主張によれば、金の幸せをもたらす力は、収入の少ない時は存在するが、収入が最大化されても、それが増すことはないのである。(1)最近出版されたある著名な社会学者の本には、収入がいったん貧困レベルを超えると、その収入が徐々に上がっていっても幸福にはほぼ全く寄与しない、ということを実証してきた数多くの研究についての記述がある。むしろ逆のことが起こるのである。つまり、富が蓄積するほどに、家族の連帯やコミュニティの仲間意識は薄れていくのである。
(2)苦難に対処することに関するアドバイスを求めるならば、セネカの著作を読めばよい。実際彼は、一部のサッカーファンに見られる暴力のような現代の愚行に関連する多くのことを述べている。彼は、我々が怒りにかられるのは、世界と他人に対する危険なほど楽観的な考えが行き詰まることによる場合が多い、ということを踏まえて、怒りを一種の狂気とみなしている。この豊かさと、効果的な医薬品と、我々を揺籠から墓場まで導くことに献身する政治システムを備えた現代世界においては、我々は不幸に見舞われるまで、不幸について予め考えることはない。賢い人間は何が起こりうるだろうかと常に考える。そして我々は予期していないことによって最も被害を受けるのだから、何事も起こりうるのだと想定しておかねばならない。ソクラテスもこのようなアドバイスを残している。『もしもあらゆる不安を払拭したいのであれば、起こるのではないかと恐れていることは、確実に起こるのだとみなすとよい』。
人間は富・権力・地位・財産の罠に誘惑されるが、満ち足りた人生の秘訣は、本当に我々を幸せにするものは何かを知る知恵である。モンテーニュは知恵、つまり我々が幸福かつ道徳的に生きる助けとなるものを知ること、が単なる知識に勝るものだと信じていた。我々に知識を与えるだけで知恵を与えないような教育は、彼の人生観からすれば、まったく馬鹿げたものである。モンテーニュが今この時代に生きていてくれたら良いのだが。
 

【難単語・難熟語】

  • there is no point → 意味がない、むだ
  • psychiatrist → 精神科医
  • sociologist → 社会学者
  • next to nothing → ほとんどゼロに近い
  • accumulate → 蓄積する
  • solidarity → 連帯、団結
  • bonding → 仲間意識
  • disintegrate → 崩壊する、バラバラになる
  • of relevance to A → Aに関係がある
  • given that~ → 〜ということを考慮すると、〜であると仮定して
  • shepherd → 導く
  • from the cradle to the grave → 揺籠から墓場まで=生まれてから死ぬまで
  • evil → 邪悪、害悪、不幸
  • put off →(心配・習慣・責任を)取り除く、取り去る
  • seduce → 誘惑する
  • possession → 財産、所有、所有物
  • scheme → 体系、概要
  • simply → 全く、本当に
  • Would that → 〜でさえあればなぁ
 

【読解・解答のポイント】

  • 下線部(1)について。前文に書かれている『一定レベルまでは収入が増えると幸せが増すが、それ以上は幸せは増えない』ということが分かっていれば問題ない。ただ、本・社会学者・研究といった少々入り組んだ要素を、上手くまとめて、分かりやすい訳にすることが必要。which以下はa numbers of studiesにかかる関係代名詞、that以下はshown『示す』の内容。そのthat節の中に、さらに従属節と主節があり、接続詞のonce『ひとたび〜すれば』が従属節を導いている。an increasingly larger one以降がthat節の中の主節。oneはincomeのこと。第二文のコロン以下は、the reverseの内容を詳しく説明している。
  • 下線部(2)について。第一文。Seneca is referredとは『セネカが参照される』→『セネカの本を読む』ということ。on『〜についての』。much to say『語るべき多くのこと』。of relevance to A 『Aに関係がある』は、much (to say)にかかっている。つまりhave much to say of relevance to Aで『Aに関係する語るべき多くのことを持っている』→『(セネカの本には)Aに関する多くのことが書いてある』。such A as B『BのようなA』。第二文。given以下がまとめにくい。given that~ 『〜ということを考慮すると、〜であると仮定して』。frustrationは『満たされないこと』『挫折すること』なので、frustration of optimistic ideasは『楽観的な(甘い・自己中心的な)考えが世界や他人に受け入れられないこと、通用しないこと』。
  • 下線部(3)について。第一文と第二文はかなり平易。第三文で差がつくだろう。superiority of A over B 『AがBに優越すること』。learningは『学習、知識、学識』など。scheme of lifeのscheme は『計画』というより、『体系』『概要』『システム』などということ、つまり『モンテーニュが人生をいかなるものと考えているか、その見方』ということ。Would that ~=If onlyで、『〜でさえあればなぁ』という文語表現。その後ろは仮定法になる。ここでは仮定法過去。Would thatという表現を知らなかったとしても、he wereが仮定法であることは明らかなので、何とか訳をひねりだすことが大切。

(Visited 1,155 times, 34 visits today)
Share this Post

Leave a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*
*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)