京大過去問 2000年 第1問(英文和訳)

/ 10月 11, 2020/ not only but also, the more, 英文和訳, 京大過去問, 難易度★★★/ 0 comments

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【問題】

次の文の下線をほどこした部分(1),(2)を和訳せよ。

There are historians and others who would like to make a neat division between “historical facts” and “values.” (1)The trouble is that values even enter into deciding what count as facts — there is a big leap involved in moving from “raw data” to a judgement of fact. More important, one finds that the more complex and multi-levelled the history is, and the more important the issues it raises for today, the less it is possible to sustain a fact-value division. But this by no means implies that there has simply to be a conflict of prejudices and biases, as the data are manipulated to suit one worldview or another. What it does mean is that the self of the historian is an important factor. The historian is shaped by experiences, contexts, norms, values, and beliefs. When dealing with history, especially the sort of history that is of most significance in philosophy, that shaping is bound to be relevant. As far as possible it needs to be articulated and open to discussion.
The best historians are well aware of this. They are alert to many dimensions of bias and to the endless (and therefore endlessly discussable) significance of their own horizons and presuppositions. A great deal can of course be learned from those who do not share our presuppositions. Our capacity to make wise, well-supported judgements in matters of historical fact and significance can only be formed over years of discussion with others, many of whom have very different horizons from our own. (2)It is possible to have a 12-year-old chess champion or mathematical or musical genius, but it is unimaginable that the world’s greatest expert on Socrates could be that age. The difficulty is not just one of the time to assimilate information; it is also the time to mature judgement and come to decisions which only ring true after complex studies and discussions with others and with oneself.
 

【和訳】

歴史家やそうでない人でも、『歴史的事実』と『価値観』をきちんと分けて考えようとする人がいる。(1)困ったことには何を事実として認定するのかを決定する際にも価値観が入り込んでくることである。『生のデータ』から事実の判定に至ることには、大きな飛躍が関わっているのである。より重要なことには、歴史がより複雑で複層的になればなるほど、そして歴史が現在に対して提起する問題が重要であればあるほど、事実と価値の区別を維持することがますます難しくなるのである。しかしこのことは、何かしらの世界観に沿うようにデータが操作されるために、必然的に先入観や偏見の相克が起こってしまう、ということを意味するわけではない。歴史家の自我が重要だということを意味しているのである。歴史家は経験、背景、規範、価値観、信念によって形成される。歴史、特に哲学において極めて重要性を持つ種の歴史を扱う際には、その歴史家がいかに形成されたかということが、必ず関わってくる。したがって歴史家の思想形成は、可能な限り明確に説明され、また議論に対してオープンであるべきである。
最高の歴史家はこのことをはっきりと意識している。彼らは偏見の多くの側面に対して注意を払っており、自身の視野や想定の限りない(が故に議論の余地も限りない)意義に対しても、注意を払っているのである。もちろん想定していることの違う人々から、多くを学ぶことができる。歴史的事実とその意義に関して、賢明かつ十分に裏付けのある判断を下す能力は、他人と、その多くが自分とは全く異なる視野を持っている他人と、何年も議論を交わすことによってのみ、養われるものである。(2)12歳のチェスのチャンピオンや数学・音楽の天才が現れることはあり得るが、ソクラテスに関する世界一の権威がそのような年齢であることは考えられない。それが難しいのは、知識を真に理解するのに時間がかかるからというだけではない。判断力を成熟させ、複合的な研究と他人や自身との議論によってのみ真実味を帯びるような結論に至るのに、時間がかかるからでもある。
 

【難単語・難熟語】

  • the trouble is that~ 困ったことには〜
  • raw 生の、未処理の
  • the self 自我、自己
  • of significance→(形容詞化して)significant
  • articulate 自分の考えをはっきり説明する、明確に述べる
  • dimension 側面、面
  • horizon 視野、展望
  • presupposition 推定、仮定
  • in matters of~ 〜に関して
  • assimilate (知識などを)自分のものにする、真に理解する
  • ring 〜のように聞こえる
 

【読解・解答のポイント】

  • 下線部(1)について。『the trouble is that~』→『困ったことには〜』。『the more A, the more B』は『Aであればあるほど、ますますB』という有名な構文だが、その前半の部分が2つある形。つまり『the more A, and the more B, the less C』→『Aであればあるほど、またBであればあるほど、ますますCでない』。ちなみに文頭のmoreはこの構文に関係なく、more importantで独立して『より重要なことに』という意味を表す。また『the more A, the more B』の構文中においては、moreの直後にmoreに導かれる形容詞が配置されるために、A,Bの各節に倒置が起きているということに注意。Aの部分の元の形はthe history is more complex and multi-levelled、Bの部分の元の形はit raises more important issues for today。Cの部分の元の形はit is less possible to sustain a fact-value division。oneは漠然と人を表す総称で、findは『〜と分かる』という意味なので、『one finds that~』→『人は〜というように分かる』であるが、特に訳に含めなくてもよい。
  • 下線部(2)について。前文の『正しい歴史的な判断ができるようには、他人と長年議論を交わす必要がある』という流れを受けて、下線部(2)では『若くて偉大な歴史家はありえない』という主張。第一段落の最後にあったように、ソクラテスは明らかに哲学的に重要な人物なので、特に研究する側の歴史家の思想形成が重要になる。『not only A but also B』の変形として、『not just A also B』という形が見られる。assimilate『同化する、知識を真に理解する』やring『〜のように聞こえる』を知らないと、かなり訳しにくく、構造も見にくくなるかもしれない。

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