京大過去問 1999年 第1問(英文和訳)
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【問題】
次の文の下線をほどこした部分(1)~(3)を和訳せよ。
Popular books with “nature” in their titles are sometimes stocked with pictures of particular natural objects, lakes, species of fish, and habitats. The photos or drawings are usually accompanied by word pictures or descriptions meant to evoke the image of particular objects. Because pictures by themselves are barren of any syntax, they make no contentions and construct no arguments about the objects that they represent. A picture of a shore bird encased in oil tar may or may not be an argument against offshore oil drilling.
(1)Depending on the moral understanding of the viewer, the picture may represent the tragic or the merely unfortunate, constitute an “argument” against any offshore oil drilling or for safer offshore drilling, or be met with plain indifference. To take another example, if I see a picture of a dying fish, I don’t know whether to feel good or bad until I read something like “This fish is dying because of poisonous waste spills from XYZ chemical company.” If I read instead “This fish is dying because it is old,” I will feel differently. By themselves, then, pictures do not argue with the world or anyone in it.
(2)Whether “real” pictures illustrate a text or whether the text merely clarifies the pictures, real pictures and word pictures alike silently and powerfully make a single demand: they want recognition. The picture states “Here is a particular tree; you’ll recognize it. Or if you don’t, the picture will help you recognize a tree like it, if and when you ever see one.” (3)The picture might be worth a thousand words when describing a particular tree or species of tree, but it is worth little in terms of understanding that there is a category of things in nature called “trees” — a category that exists in our minds independent of any particular real tree or species of trees.
This categorical understanding is premised on the power of abstraction, and abstraction presupposes a language that is not merely a good or poor substitute for a photograph but rather demands to be understood and argued with, that is, that represents the world not as an object but as an idea. Language depends on syntax, hence is necessary for reasoning and argumentation; pictures, by contrast, usually aid recognition much better than language does.
【和訳】
書名に『自然』と付く流行りの本には、しばしば特定の自然物、湖、何種類もの魚、生息地などの画像が掲載されている。その写真や絵には、言葉による描写、つまり特定の事物の映像を想起させることを意図された説明文が添えられているのが一般的である。画像自体には統語法が欠けているので、それが表している事物に関して、何の論点も示さないし、議論を招くこともない。原油に塗れた海辺の一羽の鳥の写真が、沖合での原油採掘に反対する論拠となるかどうかは分からないのである。
(1)読者の道徳理解次第で、その写真は悲劇を象徴するかもしれないし、単なる不幸を象徴するかもしれない。あるいは、沖合での原油採掘全てに反対する論拠になるかもしれないし、より安全な原油採掘を求める論拠になるかもしれない。あるいはまた、その写真は全く関心を払われずに終わるかもしれない。別の例を挙げよう。たとえば、死にかけている魚の画像を見た時に、『この魚はXYZ化学社の有毒な廃水が原因で死にかけている』などといった文を読むまでは喜ぶべきか怒るべきか分からない。仮に『この魚は老衰で死にかけている』と書いてあれば、違った感情を抱くだろう。したがって画像そのものは、世界あるいは世界に住む誰かと、議論を戦わせることはないのである。
(2)『本物の』画像が文を例証しているにせよ、あるいは単に、文が画像の意味を明示しているにせよ、本物の画像や言葉による説明はどちらも同様に、ひっそりとそして力強く、一つのことを求めている。それはつまり認識されるということである。画像は言う。『ここに特定の木がある。あなたはそれが何か認識できるでしょう。もし認識できないとしても、木を見たときに、この画像が似たような木を認識する役に立つでしょう』。(3)画像は特定の木や木の種類を描写する際には、1000語にも相当する価値があるかもしれない。しかし、自然界には『木』と呼ばれるカテゴリーが存在する、ということを理解するという点においては、ほとんど価値がない。そしてそのカテゴリーとは、いかなる『特定の』本物の木や木の種類からも独立して、我々の頭の中に存在するものなのである。
このカテゴリー的な理解というものは、抽象化の能力を前提としており、抽象化は言語を前提としている。そしてその言語とは、単に写真の十分な代替物あるいは不十分な代替物であるだけでなく、むしろ理解され議論されることを要求するものであり、つまりは世界をモノではなく観念として表現したものなのである。言語は統語法に依拠しているため、推論や議論に必要なものである。対照的に、画像はたいてい、言語よりもずっと上手く認識を補助できるものである。
【難単語・難熟語】
- habitat 生息地
- syntax 統語法
- contention 論点、意見、論争
- argument 論拠
- offshore 沖合
- A and B alike AもBも同様に
- presuppose 前提とする
- reason 推論する
- argumentation (かたく)論議、論争
【読解・解答のポイント】
- 全体的に難しい。そもそも原文の文章自体の展開がまとまっていない上に、argument, syntax, word picture, text, recognitionなどといった単語を筆者がどういう意味で使用しているのかを、自分なりに考えて、解きほぐしていかねばならない。
- (1) 3つのorが並べている要素を正確に把握出来ているかどうかが問われる。1つ目のorはthe tragicとthe merely unfortunateを並べている。2つ目のorはagainst any offshore oil drillingとfor safer offshore drillingを並べている。3つ目のorはmayの後ろの動詞の、represent〜とconstitute〜とbe met〜を並べている。
またagainst⇄forの関係についても理解していないとうまくまとまらない。 - (2)、(3)本文のダブルクォーテーションの付け方が唐突で直感的なので、その意味を無理に訳中に示そうとせず、そのままカッコを付ければ良い。単語や構文などはシンプル。文全体の難しさに惑わされず、下線部をしっかり訳せば答えとしてそれなりのものに仕上がる。また下線部(3)を読まなくても十分に解けてしまう。そうした意味ではこの年度は悪問と言える。
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初めましてコメントさせていただきます。
当方英語(特に単語)に苦手意識を持つ京大志望の浪人生です。
答案を作成したので良ければ添削お願いします。
⑴読み手の道徳的理解次第では、その写真は悲劇や単なる不幸を表すかもしれないし、あらゆる海洋での石油採掘への反対、あるいはより安全な海洋採掘を求める論争を構成するかもしれない、又は何の関心も持たれないかもしれない。
⑵”本物の”写真が文章を表現しているにせよ、あるいは文章が単に写真を明らかにしているにせよ、本物の写真も文章による写真も同じように、寡黙で力強くある一つのものを求めている。すなわち、それらは認識を欲しているのだ。
⑶この写真はある特定の木や木の種類について述べる際には千語と同等の価値を持つだろう。しかし、自然界に木と称されるカテゴリーが存在すると理解することについては少しの価値しか持たない。そのカテゴリーは、私たちの精神の中に、あらゆる本物の木や木の種類などからは独立して存在している。
素晴らしい解答を送って頂いて、ありがとうございます。1つずつ見ていきます
(1)とてもよい解答だと思います。名詞のargumentに対して『論拠・主張』のような訳を付ければ、『論争を構成する』の所がもう少し自然な訳にできたかもしれませんね。any offshore drillingのany『あらゆる』が『海洋』にかかっているように読めることが、少し気になります。とはいえ、全体として間違っている部分はなく、ほぼ満点だと思います。
(2)これも良くできた解答だと思います。文法的に間違っているところはありません。合格レベルに達していると思います。いくつか気になる点をあげます。
・第一段落にThe photos or drawingsとあるので、pictureを写真に限定しない方がよい。
・『写真が文章を表現する』『文章が単に写真を明らかにする』の意味をもう少し分かりやすくした方がよい。
・word pictureの内容も第一段落で説明されており、descriptions meant to evoke the image of particular objectsのこと。『文章による写真』は分かりにくいので、『言葉による説明』くらいに変えるとよい。
【読解・解答のポイント】の所にも書きましたが、本文がそもそも分かりにくく、説明不足気味なので、完璧な理解と解答はかなり難しいと思います。
(3)問題ないです。合格レベルです。
・littleは否定的に訳した方がよい。
・mindはここでは事物のカテゴライズを司る働きなので、『精神』より『頭脳・頭・知性・思考』などの方がよい。
京大の過去問の中でも、この問題は1、2を争うほど難しいものです。これだけできれば十分合格できるはずです。1問10点の30点満点とすれば、25点以上もらえるのではないでしょうか。特に文章構造の理解は完璧で、気になる所はありません。単語は逐語訳になりすぎて、日本語だけ読んだときに不自然に感じる部分があります。文章の中での意味を解釈して意訳し、『英文を読んでいない人でも理解できる和訳』を意識されると良いと思います。
返信遅くなりました、丁寧な添削ありがとうございます!
和訳の採点は自分だとどうしても甘くなってしまうので的確なアドバイス本当にありがたいです。
他の年度も解き終わったらまた答案をコメントしたいとおもいます。
これからもどうかよろしくお願いします♂️
2ヶ月後くらいに受験を控えた浪人生です。
(3)の「自然界には『木』と呼ばれるカテゴリーが存在する」という訳であると、これがー以降の文章と内容が合致しなくなると思います。というのも「自然界」という語が入ると「『木』と呼ばれるカテゴリー」が人間の思考の中にあるという意味と矛盾してしまうからです。ですから例えば、「自然の中の物として『木』と呼ばれるカテゴリーが存在する」と訳すといいのかなと思いました。
拙い文章で細かい指摘な気がしますが、気になったのでコメントさせて頂きました。