京大過去問 1981年 第1問(英文和訳)
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【問題】
次の文を和訳せよ。
History begins when men begin to think of the passage of time in terms not of natural processes — the cycle of the seasons, the human life-span — but of a series of specific events in which men are consciously involved and which they can consciously influence. History, says *Burckhardt, is “the break with nature caused by the awakening of consciousness”. History is the long struggle of man, by the exercise of his reason, to understand his environment and to act upon it. But the modern period has broadened the struggle in a revolutionary way. Man now seeks to understand, and to act on, not only his environment but himself; and this has added, so to speak, a new dimension to reason, and a new dimension to history.
*Burckhardt ブルクハルト(1818~97):スイスの歴史家
【和訳】
人が時の経過を、季節の循環や人の寿命といった自然のプロセスの観点でなく、人が意識的に関わり、意識的に影響を与えることのできる一連の具体的な出来事という観点で考え始めた時、歴史が始まる。ブルクハルト曰く、歴史とは「意識の目覚めに起因する自然との断絶」である。歴史とは、理性を発揮することにより環境を理解し、環境に働きかけようとする、人間の長い闘いなのである。しかし現代は、その闘いを劇的に拡大した。人は環境だけでなく、自らを理解しようとし、自らに働きかけようとしている。このことにより、いわば、理性に新たな次元が生まれ、歴史に新たな次元が生まれたのである。
【単語・熟語】
- passage → 経過
- in terms of → 〜という観点で
- human life-span → 人間の寿命
- consciously → 意識的に
- be involved → 関わる、参加する
- break with~ → 〜との断絶、〜との決別
- awakening of consciousness → 意識の目覚め
- exercise → (精神を)働かせること、使用すること
- reason → 理性
- act on~ → 〜に作用する、〜に働きかける
- broaden → 広げる、拡大する
- in a revolutionary way → 革命的に、劇的に
- so to speak → いわば(耳慣れない比喩表現を用いる際に付す)
- dimension → 次元
【読解・解答のポイント】
- 第1文について。少し構造が見にくい。not A but B『AではなくB』がin terms of~『〜という点で』の中に組み込まれた形。in terms not of natural process but of a series of specific events『自然のプロセスではなく、一連の特定のイベントという点で』。
- 第2文について。Burckhardt says History is “the break〜”と語順を考えるとわかりやすい。””(ダブルコーテーション)の中が引用。break with~は『〜との断絶、決別』。
- 第3文について。reasonの『理性』の意味は覚えておく必要がある。
- 第4文について。broadenは『broad:広い』に動詞化の接尾語『en』が付されて、『広げる』という意味になったもの。
- 最終文にもnot only A but (also) Bの形が見られる。;セミコロンは結果を表している。thisは『人間が環境だけでなく、自身についても理解し働きかけようとしている』こと。
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1981京大和訳:添削宜しくお願いいたします。本番を意識して辞書は使わないでやってみました。
移り変わる季節や人の寿命のような自然な流れではなく、人が意識的に関わり、意識的に影響を及ぼせる一連の出来事についての時間の流れを考え始めるときに歴史は始まる。ブルクハルトによると、歴史は「意識の目覚めによって引き起こされる自然の崩壊だ」歴史は人の長い葛藤で、人の理性の活動によって、環境を理解し、それに対処するためのものだ。しかし、現代はこの葛藤を革命的な方法にまで広げてしまった。人は今、環境だけでなく自信について理解して対処しようと努力する。そしてこのことは、いわば、新しい理性の次元、新しい歴史の次元の域まで達してしまった。
素晴らしい和訳ですね。 辞書なしでここまでできれば、もう英語力は十分ではないでしょうか。これで満点だと思いますが、せっかくなのであえて細かいことを言います。
① processesとpassageの両方に流れという訳がついていますが、筆者は意図的に別の単語を選んで使っているわけですので、別の日本語をしておいた方がよいかと思います。もちろん訳し分けられない場合もありますし、当サイトの訳も『プロセス』とそのままにしてしまっているのですが・・・
② breakですが、自然の破壊というと、環境破壊が思い浮かんでしまいます。辞書に『bréak with A «…をめぐって» A〈組織〉と決別する «over» ; A〈人〉と絶交する, A〈家族〉と縁を切る. A〈伝統・過去・習慣〉との関わりを絶つ[を捨てる].』とあります。ここは『決別、断絶』くらいに訳してはいかがでしょうか。
③ 自信は変換間違いでしょう。
④ 訳に『〜しまった』と2度出てきます。英語の第4文と第5文に相当するのですが、歴史の質が変化したことを筆者が否定的に考えているような印象を与えます。筆者は中立的で、特にそのような意図はないと思います。おそらくその前のstruggleを『葛藤』と訳したことに引きずられているのかもしれません。
色々と書いてしまいましたが、いずれにしてもこれだけの訳ができれば合格です。それどころか当サイトの訳より分かりやすいくらいです。この調子で頑張ってください。
ありがとうございます!今後もよろしくお願いいたします。
添削お願いします。辞書は使わなかったゆえやや不十分かもしれません。
歴史は、人間が時間の経過を自然の過程ー例えば季節の循環や寿命ーではなく、人間が意識して関わり、かつ人間が意識的に影響を与えられる特定の出来事の連なりという点から考え始めた時に始まる。ブルクハルトに言わせると、歴史は「意識に覚醒によって引き起こされる自然との断絶」である。歴史は、人間が理性を用いることによって、周囲の環境を理解しそれに働きかけるという、人類の長い苦闘だ。しかし現代は、この苦闘を革命的な手法で広げていった。今や人間は、環境だけではなく自身をも理解し、働きかけようとしている。そして、いわばそれは、理性や歴史に新たな次元を付与していったのだ。
『連なり』『ブルクハルトに言わせると』『革命的な手法』といった表現にセンスが感じられる素晴らしい和訳だと思います。文法的に読み違えもなく、満点で良いと思います。
細かい所ですが、『寿命』→『人間の寿命』、『意識に覚醒』→『意識の覚醒』としておいてください。