東大過去問 2009年 第1問(要約)
- 難易度★★☆☆☆(2/5)
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【目次】
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【問題】
次の英文の趣旨を、70~80字の日本語でまとめよ。句読点も字数に含める。
When I was six or seven years old, I used to take a small coin of my own, usually a penny, and hide it for someone else to find. For some reason I always “hid” the penny along the same stretch of sidewalk. I would place it at the roots of a huge tree, say, or in a hole in the sidewalk. Then I would take a piece of chalk, and, starting at either end of the block, draw huge arrows leading up to the penny from both directions. After I learned to write I labeled the arrows: SURPRISE AHEAD of MONEY THIS WAY. I was greatly excited, during all this arrow-drawing, at the thought of the first lucky passer-by who would receive in this way, regardless of merit, a free gift from the universe.
Now, as an adult, I recall these memories because I’ve been thinking recently about seeing. There are lots of things to see, there are many free surprises: the world is full of pennies thrown here and there by a generous hand. But ー and this is the point ー what grown-up gets excited over a mere penny? If you follow one arrow, if you crouch motionless at a roadside to watch a moving branch and are rewarded by the sight of a deer shyly looking out, will you count that sight something cheap, and continue on your way? It is dreadful poverty indeed to be too tired or busy to stop and pick up a penny. But if you cultivate a healthy poverty and simplicity of mind, so that finding a penny will have real meaning for you, then, since the world is in fact planted with pennies, you have with your poverty bought a lifetime of discoveries.
*Pilgrim at Tinker Creek by Annie Dillard, HarperCollins Publishers
【単語】
- penny ペニー(英では100ペニーで1ポンド、米では1セント硬貨を指す)
- hid hideの過去形
- stretch of~ 一筋の〜
- sidewalk 歩道
- used to ≒ would かつて〜したものだった
- place 置く
- root 根
- say 例えば
- either end それぞれの端
- lead up to~ 〜へ繋がる
- direction 方向
- label 書き足す、ラベルを貼る
- at the thought of~ 〜を考えて
- passer-by 通行人
- merit 長所、価値
- regardless of~ 〜に関わらず
- recall 思い出す
- here and there あちこちに
- by a generous hand 気前のよい手によって
- this is the point これが重要なのであるが
- grown-up 大人
- mere ほんの、単なる
- crouch motionless 動かずにしゃがむ
- branch 枝
- be rewarded by~ 〜によって報われる
- deer 鹿
- count O C OをCとみなす
- continue one’s way 自分の道を続ける→通り過ぎる
- dreadful poverty 恐ろしい貧しさ
- cultivate 育む、養う
- a healthy poverty and simplicity of mind 精神の健康的な渇望と単純さ
- have bought a lifetime of discoveries 発見の一生を購入する→人生がずっと発見に満ちたものになる
【和訳】
6歳か7歳の頃、私は自分の小額のコイン(それは大体1ペニー硬貨だった)を持ち出して、誰かがそれを発見するように隠すのが好きだった。なぜだか私はいつも同じ歩道に硬貨を隠した。例えば私は大きな木の根元や歩道の穴の中にそれを置いた。それから私はチョークを取り出して、そのブロックのそれぞれの端からスタートして、両方向からそのペニー硬貨まで、大きな矢印を描いたのだった。字が書けるようになってからは、その矢印に「なんとこっちにお金があります」と書き足した。最初の幸運な通行人は、その人がどんな人であっても、こんな風に宇宙からただで贈り物を受け取れるのだ、と考えて、この矢印を書いている間、私はとてもドキドキしたものだった。
大人になった今、私があの頃を思い出すのは、私が最近、「見る」という事について考えているからだ。世の中には見るべきもの、お金のかからない驚きがたくさんある。太っ腹な手がばらまいたペニー硬貨で、世界は満たされているのだ。問題は大人達がペニー硬貨などでは興奮しないという事である。矢印に導かれて、息を潜めて路傍にかがみ、枝葉の揺れるのを注視してみると、一頭の鹿がおどおどと顔を覗かせる。あなたはこの光景をくだらないと感じて、通り過ぎてしまうだろうか。忙しく疲れ切って、1ペニーを拾わない者は、怖ろしく貧しい者である。しかしもし、1ペニー硬貨を見つける事が何らかのリアルな意味を持つほどに、精神が良い意味で飢えていて、かつシンプルであれば、その人の一生は発見の喜びに満ちたものになるだろう。この世界には、発見の驚きという1ペニー硬貨が、あちこちに散らばっているのだから。
【解答例】
子供の頃、私は隠した硬貨を通行人に発見させるのが好きだった。世界に溢れているそうしたささやかな発見に対して、素直に驚きと喜びを感じられる大人でいたいものだ。(78字)
【解説】
【要約のポイント】英文を正確に和訳できることが大前提である
このポイントはどれだけ強調してもしすぎることはありません。初見の英文であっても、正確に和訳できるようにすることが第一です。 正確に和訳できた時点で、要約問題はほぼ終わっているようなものです。もしも正しい日本語に訳すことができているのに、それを日本語で要約できない生徒は、英語力以外の部分が足りていないと言えます。
◆ 第1段落 【】
◆ 第2段落【】
【生徒の答案】
(1)この世界は筆者が幼少期に隠した一ペニーのようなささやかな喜びで満ちており、そういった無償の贈り物に価値を見出せるようになれば、発見の多い豊かな人生となるだろう。(80字)
(2)忙しすぎて立ち止まることができないような人生は貧しく、貧しくても些細なことに幸せを見出し、単純さを心の中に育めば、世界は喜びで満ち溢れ、発見が伴った物となる。(79字)
【生徒の答案の採点と添削】
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趣旨と要約は別物ですよ。
ありがとうございます!
① ある事をする理由・目的。趣意。「修正案の―を説明する」「―に反する」
② 話や文章の言おうとする肝心なこと。要旨。「お話の―はよくわかりました」〔同音語の「主旨」は言おうとしていることの最も中心となる事柄のことであるが,それに対して「趣旨」は言おうとしていることの目的や理由をいう〕
という辞書の②の意味をとって、要約と同じように考えていましたが、趣旨とは目的のことを指しているんですね。つまり、この年の問題は「趣旨をまとめよ」との問題ですから、この文章で言おうとしていることの目的や理由をまとめる必要が出てきるということになります。
そうなると、前半部分の具体例に触れる必要は、完全になくなりますね。少し時間がかかるかもしれませんが、訂正しておきます。興味深いご指摘ありがとうございました!
子供の頃に興味深く思えたことが大人になるとつまらなく思われることがある。だが、探求心と素直さを持てば、ふとしたことに感動でき、豊かな発見に満ちた人生を送れる。(79字)
世界は、無料で、ささやかな驚きに満ちているが、大人になると、多忙と疲労で、人は無感動になる。しかし、子供の頃の健全な心を育てれば、小さな発見が一生続く。(76字)